【私が通訳になるまで14】通訳学校と実践英語コース

 

 こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。

 

 私の英語歴、今回からは通訳学校サイマル・アカデミーでの4年半の激動の訓練期間について書いて行きます。まずは通訳コースに入る前段階、レベル7の実践英語クラスを振り返ります。

 

山下えりか 通訳になる ブログ 14

 

 サイマル・アカデミーの授業はコースを問わず、1回2時間、週2回行われました。少ないと思われるかもしれませんが、授業が無い日は前の授業の復習と次の授業の予習の時間で、授業当日は成果と実力を講師に見てもらうための時間です。授業と同じくらい自主学習が物を言う内容なので、授業以外の時間も授業と同じくらい大切なのです。

 

 実践英語レベル7クラスの授業内容は、大きく分けて次のような感じでした。

 

 講師が用意した短いニュースのビデオ(CNNやBBC)を見て、それぞれの生徒が聞き取った内容について確認し合ったり、その内容について講師が用意した問題を解いたり、生徒同士で内容について議論をするパターン。それぞれの生徒が与えられたお題について短いスピーチを用意してきて発表し合い、またそれについて感想を述べたり議論をするパターン。ディベートのお題を与えられ、賛否どちらの内容でも議論ができるように全員が準備をして行き、授業当日に賛成派・反対派に分かれてディベートをするパターン。

 

 もちろん授業は全て英語です。通い始めた当時まだ時事に疎かった私には、毎回ついて行くのがやっとでした(笑)

 

 それでもこの実践英語レベル7のクラスでの半年間は、私の英語学習人生の中で一番幸せな半年間でした。当時の私にはまだまだ難しい内容の多いクラスでしたが、とにかく毎回楽しくて仕方がない状態でした。今でも思い出すととても幸せな気持ちになります。

 

 このクラスが私にとって至福のクラスだった理由は、この2つです。

 

1.初めて「英語のための英語の勉強」ができたこと

2.クラスメイトに恵まれたこと

 

 中学から始まり、高校留学、高校、大学と、常に英語の勉強をしてきましたが、それは常に「何かのための」英語の勉強でした。それは中学ではスピーチコンテストや受験勉強のためであり、高校留学では生活全般のためであり、帰国後の高校生活では学校の授業の一部であり、大学では高校留学と同じく生活全般と学校生活のための英語でした。

 

 中学や高校のように他の教科も無く、生活のためでもなく、英語の能力を上げるためだけに英語の勉強ができたのは、この半年間が最初で最後でした。その後の英語学習は今に至るまで、通訳業のためです。このクラスも通訳コースの前段階だったのだから通訳業のためじゃないか思われるかもしれませんが、クラスの内容自体が英語学習に特化したものでしたから、全く別物でした。ただただ大好きな英語に磨きをかけるためにあったあの時間は、とても貴重な時間で、本当に、本当に楽しい時間でした。

 

 またこのクラスでは、クラスメイトにも恵まれました。

 

 生徒は私を含め5人という超少人数で、男性1人、女性4人。唯一の男性と女性1人は元英語教師(共に50代)。また別の女性は元国語教師(60代)。もう1人は長期海外生活経験者の元駐在員の奥様(40代)。皆さん人生経験も知識も豊富な大先輩でした。それに加え全員同じくらい向上心が高く、常に適度な緊張感があり、お互いに刺激し合える最高の学習環境でした。

 

 そのレベルの人たちと共に学ぶことができ、また彼女たちに自分の実力が認められることはとても嬉しかったですし、励みになりました。毎回何かを吸収している実感があり、自分の英語にも自信を持つことができ、充実した半年間でした。

 

 その後通訳コースに入り、そんな自信は跡形もなく消え去るのですが、それはまた後日。

 

 ピリッとした心地よい緊張感の中で最高のクラスメイトに囲まれ、大好きな英語に思う存分没頭できたこの幸せな半年間はその後、苦しい通訳訓練を勝ち残って行く支えになりました。ここで自分がどれだけ英語を愛しているかを実感できていたからこそ、逃げたくなっても迷っても、英語の光だけは見失わずにいられたのだと思います。

 

 半年間のコースの最後に、担当講師とのガイダンスがありました。このクラスを終えたら通訳コースに入ることは、最初から伝えてありました。以下、講師のコメントです。

 

 「次は通訳コースだね。うん、大丈夫だと思う。君がこのクラスに入ったばかりの頃の英語は“ハイスクール・カレッジ”レベルだった。でも今は大分大人の英語に近づいたと思うよ。通訳の勉強頑張ってね。」

 

 “ハイスクール・カレッジ”レベル。

  

 入学時のレベルチェックで「一般的には申し分ない完成度の高い英語」と言われレベル7の評価を受けた私の英語は、「フォーマルさに欠ける」と指摘された通り、いわゆる「子供の英語」でした。半年間これだけ良い環境で英語の勉強をしてやっと、「大分大人の英語に近づいた」程度でした。

 

 そしてプロの通訳に求められるのはただの大人の英語ではなく、「プロの英語」です。

 

 そうは言ってもいまいちまだ実感は湧きませんでした。分からないから勉強をして行くうちに覚えるしかないと開き直ってもいました。

 

 次に来る通訳コースはきっととんでもないところだろうと漠然と感じつつも、具体的にどんな感じかは分かりません。分からないならやはり開き直り、目をつぶって飛び込むしかありません。そうは思いつつも通訳コース準備科(現通訳I)の初日が近づくにつれ、大きな期待は更に大きな不安へと姿を変えて行きました。

 

 いよいよ過酷な通訳訓練が始まります。

  

 

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