通訳の頭の中のコビトさん「要約」&「品質管理」

山下えりか 同時通訳 通訳 英語 講座 オンライン スカイプ 通訳技術 要約 チェック 品質

 

 こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。

 

 通訳技術をコビトさんで擬人化して解説する『通訳の頭の中のコビトさんシリーズ』にこの度2人が新たに加わりました。今回はこの新顔の2人をご紹介します。

 

まずはこの2人が加わった経緯から。「新顔」とは言っても以前から存在していた子たちで、私が可視化できていなかっただけです。特に「要約担当」のコビトさんに存在にはずっと前から気づいていてイラスト化したい気持ちはあったのですが、忙しい日々の中で後回しにしたままでいました。

 

 そんな中、今月から週末にSNSでコビトさんシリーズの記事の再掲載を始めて改めてシリーズを読み直していたところ、せっかく再掲載するのに「要約担当」がいないのはやはり不完全だと感じました。また再度彼女たち(自分の通訳作業)を分析しなおしたところ、もう1人「訳のチェック担当」もいるじゃないかという気づきもあり、このタイミングでイラストレーターの田中ゆかさんに追加のイラストをお願いするに至りました。(再掲載を始める前にやっておきなさいという話ですよね、まったく…苦笑)

 

 それではここから、新顔の2人を紹介させていただきます。

 

 

✔ 要約担当


【基本情報】

 

担当:情報の仕分けとまとめ。入ってきた情報を必要なものと不要なものに分け、情報に優先順位を付けて訳す内容をまとめる。

性格:慎重でありながら思い切りが良い

表情:自信家(バリバリのキャリアウーマンのイメージ)

アイテム:大きなふるい

 

 要約は、リテンション&リプロダクション(情報を正確に記憶して再現する技術)と並んで重要な通訳の基礎技術のひとつです。私が通訳訓練を受けたサイマル・アカデミーでは、準備科(通訳I)と入門科(通訳II)の授業の多くの時間を要約とリテンションに割いていました。

 

 通訳者に求められる要約の技術とは「重要な情報を瞬時に見分ける技術」であり「必要な情報を短時間で簡潔にまとめる技術」です。通訳者は情報に優先順位を付けながら話を聞き、重要な情報を中心に頭の中で話をまとめて訳に反映させます。

 

 このコビトさんは3人目の「記憶担当」が覚えた内容を反芻しながら情報に優先順位を付け、必要な情報と不要な情報の仕分けをし、この後の作業が効率よく進むように「訳す内容」をまとめます。

 

 彼女の性格を「慎重でありながら思い切りが良い」としているのは、それが要約をする際に大切な姿勢だからです。大切な情報を削ってしまうなどということは絶対にしてはいけない一方で、不要な箇所をそぎ落とせなければ要点の見えない分かりづらい訳になってしまう可能性があります。情報の仕分けには細心の注意が必要です。とは言っても通訳は常にスピード勝負ですから、この判断を慎重にかつスピーディーにこなすことが重要なのです。

 

 表情が「自信家」となっているのは、「今の私が」要約を得意としているからです。ゆかさんに最初にコビトさんたちを描いてもらったサイマル・アカデミー入門科(通訳II)の頃はまだまだ要約に対する苦手意識が強く、毎回半べそをかきながら演習をやっていました。その甲斐あって今では通訳をする際の私の大きな武器となっています。当時の感覚に合わせて表情を設定しようかとも思いましたが、せっかく今これだけ自信を持てるものになったので、今の感覚で形にしてもらいました。

 

 また今回は初めて色の指定もしました。私にとって要約は楽しい作業だからなのか、「要約」のイメージがオレンジ色だったのです。と言っても意味不明と思われるとは思いますが、私にとっては大切な要素なので文字に残しておきます(笑)。

 

 「要約担当」のコビトさん。彼女の作業が適切であればあるほど、単語や表現を探す作業も訳を組み立てる作業も無駄なく進められますし、聞き手に伝わりやすい内容の訳を作ることができます。彼女もまた、通訳プロセスに欠かすことのできない大切な存在です。

 

 

✔ 品質管理担当


【基本情報】

 

担当:出来上がった訳の最終チェック。「組み立て担当」が作った訳を「声に出す担当」に渡す前に見直す係り。)

性格:丁寧でこだわり屋。でも仕事はスピーディー。

表情:わくわく(作品の完成を楽しみにしている感じ)

アイテム:片眼鏡

 

 同時通訳の場合は聞こえた端から訳していくことが多いので細かいチェックまで手が回らないことが多いですが、逐次通訳の場合はまとまった内容を一気に訳すため、訳を声に出す前に訳の内容全体をチェックしています(またはチェックが終わった部分を声に出しながら次の訳をチェックしている場合もあり)。

 

 「重要な情報の漏れは無いか」「単語は間違っていないか」「表現は適切か」「この構成で伝わるか」「どの順番で訳すか」等々、様々なポイントのチェックを一瞬でこなすのが、「品質管理担当」のコビトさんです。

 

 通訳訓練当初はひたすら「聞いて、覚えて、訳して、声に出して」について行くだけでいっぱいいっぱいで、自分の訳をチェックしている余裕などありませんでした。それでも訓練が進むにつれ、また卒業して実戦での経験を積むにつれ、より聞き手を意識した通訳ができるようになり、「訳す」と「声に出す」の間に内容をチェックをする余裕が生まれました。

 

 彼女の性格は「丁寧でこだわり屋。でも仕事はスピーディー」。時間にしたら1秒もないかもしれませんが、使える時間をフルに使って、訳の最終チェックをします。またここまでのコビトさんたちが丁寧な仕事をしていれば、彼女の負担はその分だけ軽くなります。ここまで訳を紡いできたコビトさんたちの仕事を信頼しつつ、それを声に出す次のコビトさんが自信を持って歌い上げられるように、常に細部に目を光らせているのです。

 

 彼女の表情が「わくわく」なのは、18人のコビトさん全員で作り上げた訳の仕上がりを楽しみにしているから。「話し手のメッセージを過不足なく伝えたい」「聞く人に良い訳を届けたい」「話し手と聞き手と一緒にその場の空気を作りたい」その一心で、時間との闘いの中にありながらも常により良い訳を目指してチェックを続ける、向上心と好奇心旺盛なコビトさんです。

 

 

✔ 通訳の頭の中の18人のコビトさん


 そんなわけで16人あらため「18人のコビトさんたち」で引き続き『通訳の頭の中のコビトさんシリーズ』をお送りして参ります。今後とも、コビトエリカたちをよろしくお願いいたします。

 

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【About Erika】

職業:英語同時通訳者(個人/フリーランス)

現住所:東京

留学歴:3年(アメリカ)

特技:柔道(初段)、ピアノ(弾き語り)

趣味:料理、お菓子作り、食器屋巡り

楽しみ:正月の箱根駅伝、2か月に1度の大相撲観戦(テレビ)、年に数回の柔道国際・国内大会テレビ観戦、年に数回のブロードウェイミュージカル日本公演、不定期の札幌旅行