【英文法で楽しむ洋楽#001】What’s Going On / Marvin Gaye(歌詞和訳&文法解説)

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 こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。

 

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、当初は主要都市のみに出されていた緊急事態宣言が日本全国に出されました。海外からオンライン講座をご受講いただいている生徒さんたちの周辺ではすでに先月上旬から都市封鎖や外出自粛が始まっていて、それが日常生活にどのような影響を及ぼしているかなど参考になる話を事前に聞いていました。そのためある程度の覚悟はできていましたが、実際に自分の生活に影響が出てくると、「日常とはこんなに簡単に変わってしまうものなのか」と驚きを禁じえません。

 

 生徒さんたちやブログにメッセージをくださる方々からはこんな時だからこそ勉強に励もうという声も多く聞かれ嬉しい限りですが、ただ普通に生活するだけでも平時とは異なる緊張にすべての人が晒されているのもまた事実です。この重苦しい空気の中、このブログでもストイックな通訳トレーニングや英語学習に関する話題ばかりでは(私自身が)息苦しくなってしまうので、今回は少し気分を変えて、洋楽の紹介をしたいと思います。ただ曲を紹介するだけでは芸が無いので、英語学習ブログらしく歌詞の和訳と文法の解説もいたします。

 

 今回は、ここ数週間毎日テレビやネットから流れてくる新型コロナウイルスに関する「今世界で起きていること」にちなみまして、Marvin GayeのWhat’s Going Onを紐解いてまいります。

 

 文法的な分析から見えてくる洋楽の奥深い世界を楽しんでいただけたら嬉しいです。

 

 

✔ タイトル "What’s Going On" の解釈


 この曲についてリサーチをしていた時に、ある歌詞紹介サイト(英語)に出会いました。Genius Lyrics というサイトで、ここではユーザーが曲の歌詞にその曲の背景やアーティストのこと、歴史的背景などについて注釈をつけることができます。このサイトのWhat’s Going Onのページ( https://genius.com/1785519 )で、興味深い解釈を目にしました。以下に引用します。

 

When you initially hear Gaye sing the words “What’s going on” you could perceive it as being a question. But the text on the album cover and the song title don’t contain question marks.

 

These final lines confirm that Gaye isn’t asking what’s going on. He’s telling us about all the troubling things that are going on in the world in the early ‘70s.

 

最初に”What’s going on”という言葉をゲイが歌っているのを聞くと、これを疑問・質問と捉えるでしょう。しかしながらアルバムカバー(ジャケット)のテキストや曲のタイトルに疑問符はついていません。

 

最後の数行(” Tell me what's going on, I'll tell you what's going on”)から読み取れるように、ゲイは何が起きているのかを問うてはいません。彼は70年代初期に世界で「起きていた」様々な問題を私たちに語っているのです。

 

 

✔ "What"は疑問詞...ではない?


 “What”という疑問詞を使っているのになぜ疑問形にならないのかと不思議に思う方もいると思いますので、ここで文法の解説を。

 

 “what”は確かに疑問詞ですが、それ以外にも関係詞として使われる場合があります。分かり易いように例をご覧ください。

 

What are you asking?

あなたは何を質問しているの?

 

That is not what I’m asking.

それは私が質問していることではありません。

意訳:そんなことは質問していない!

 

 前者は疑問詞としての使い方で、「何を/何が」という意味で使われています。後者はその言葉の後ろに説明が加わる形の関係詞としての使い方で、「こと/もの」として使われています。

 

 前出の注釈をつけた方は、What’s Going Onの”what”は後者の関係詞として使われていて、この曲の歌詞は「何が起きてるんだ」と疑問を投げかける形ではなく、「今起きていること」を世に伝える形で書かれていると解釈しているのです。注釈の文中で取り上げている最後の数行は確かに関係詞として使っている箇所なので、それを全体に適用しても不自然ではありません。また英語の疑問文は最後に疑問符がつくことが基本のルールなので、「疑問符がついていないから用法は疑問詞ではなく関係詞」という解釈ももっともです。

 

 

✔ 私の解釈


 これを読むまで私もWhat’s Going Onは疑問形だと思っていました。しかしこの解釈をもとに歌詞を考察してみると、個人的にはこの注釈の通り”what”を疑問詞ではなく関係詞として扱う方がしっくりきます。

 

 この曲はベトナム戦争の反戦歌としても有名です。「何が起きてる?」よりも、「こんなことが起きてるぞ」と世に訴えかけているという解釈の方がメッセージの重みが増します。

 

 以上の理由から、私の和訳も”what”を関係詞として捉えてつけました。Erika流の解釈と和訳を楽しんでいただけたら嬉しいです。

 

 

  

 

What's Going On / Marvin Gaye


Mother, mother

母親たちよ

There's too many of you crying

途方もない数の母親たちが泣いている

Brother, brother, brother

兄弟たちよ

There's far too many of you dying

途方もない数の兄弟たちが死んでいる

 

“mother”も”brother”も英文は複数形にはなっていませんが、

それぞれに続く歌詞の中では”many of you”と不特定多数に呼びかける形で複数形になっているので、

この後に続く”father”との対比のために複数形で訳しています

 

You know we've got to find a way

なあ、僕らは方法を見つけなきゃいけない

To bring some loving here today, yeah

今この日この場所に愛をもたらす方法を

 

Father, father

父よ

We don't need to escalate

僕らが激化する必要はない

You see, war is not the answer

分かるだろう、争いは答えじゃない

For only love can conquer hate

愛だけが憎しみに打ち勝つことができるんだ

 

前出の”mother”と”brother”とは異なり、”father”は単数扱いで、

特定の父親、つまりマービン・ゲイ氏本人の父親に呼びかけていると

考えられます

2行目の”We(僕ら)”は本人と確執のあった父親を表していると

解釈できます

マービン・ゲイ氏が口論の末に父親に射殺されたというのは有名な話です

 

You know we've got to find a way

なあ、僕らは方法を見つけなきゃいけない

To bring some loving here today

今ここに愛をもたらす方法を

 

Picket lines and picket signs

監視線とプラカード

Don't punish me with brutality

残忍なやり方で僕を罰しないでくれ

Talk to me, so you can see what's going on

話てくれ、そうすればわかるさ今起きていることが

What's going on

今起きていること

Yeah, what's going on

今起きていること

Ah, what's going on

今起きていること

 

“now”という言葉はついていないのに「今」と入れている理由は、

これが”is going(=be動詞+一般動詞の原形)”で、

「現在進行形(今起きていること)」になっているためです

 

In the mean time

とにもかくにも

Right on, baby

その通りさ

Right on, right on

その通り、その通り

 

Mother, mother everybody thinks we're wrong

母さん みんな僕らが間違っていると思ってる

Oh, but who are they to judge us

でも僕らを批判している奴らは何者なんだ

Simply because our hair is long

僕らの髪が長いってだけでさ

 

「髪が長いだけで批判される」は

当時戦争反対を掲げて活動していたヒッピーの描写

 

Oh, you know we've got to find a way

なあ、僕らは方法を見つけなきゃならない

To bring some understanding here today, oh

今ここで理解し合う方法を

 

Picket lines and picket signs

監視線とプラカード

Don't punish me with brutality

残忍なやり方で僕を罰しないで

Come on, talk to me

さあ話してよ

So you can see

そうすればわかるから

Ah. what's going on

今起きていることが

Yeah, what's going on

今起きていること

Tell me what's going on

今起きていることを話してよ

I'll tell you what's going on – Whoo

僕も今起きていることを話すよ

Right on baby, right on baby

その通り、その通りだ

 

 

✔ 最後にひとこと


 中には私の解説や解釈が違うと思う方もいらっしゃるでしょう。しかしながら「これは絶対に間違い」というもの以外は、どんな解釈も正解だと私は思っています。

 

 聖書だって同じ本を多くの人が読んでそれぞれに異なる解釈をしているために、同じキリスト教の中にたくさんの宗派があるわけです。これだけ古くからあって多くの人が読んでいる本にそれだけたくさんの解釈があるのですから、たった数分間の音楽と抽象的に書かれた歌詞の解釈が聞く人の数あっても不思議ではありません。

 

「こんな解釈もあるんだ」

「こんな聞き方もあるんだ」

 

 この曲もこれから紹介して行く曲も、そんな風に感じながら読んで貰えたら嬉しいです。

 

  

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【About Erika】

職業:英語同時通訳者(個人/フリーランス)

現住所:東京

留学歴:3年(アメリカ)

特技:柔道(初段)、ピアノ(弾き語り)

趣味:料理、お菓子作り、食器屋巡り

楽しみ:正月の箱根駅伝、2か月に1度の大相撲観戦(テレビ)、年に数回の柔道国際・国内大会テレビ観戦、年に数回のブロードウェイミュージカル日本公演、不定期の札幌旅行