社内通訳初心者向けガイド - 職場で通訳を頼まれた時の準備と対策

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 こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。

 

 当通訳講座にお申込みをいただく方の中でここ1〜2年特に多いのが、「社内で通訳を頼まれましたが通訳の経験がなく、上手く通訳できずに困っています」というご相談です。

 

 この傾向からも分かる通り、社内通訳者の需要は増加傾向にあります。そしてこれに伴い、「英語ができるなら通訳できるよね」と軽い気持ちで英語ができる社員に通訳業務を任せようとする企業も増えています。その一方で任される側は、通訳の経験や理解不足から困難に直面することも少なくありません。

 

 通訳技術は一朝一夕で身につくものではないためすぐに通訳ができるようになる方法を教えることはできません(あるなら私が知りたい!)。しかしながら通訳初心者が社内で通訳をするために知っておくべきことを伝えたり、必要な環境づくりについてヒントと対策を共有することは可能ですので、今回はこの点についてお話しします。

 

 以下は、通訳をする本人と通訳を使う側の両方が知っておくべき事柄のリストです。なぜ「本人と使う側の両方」かと言えば、通訳を任される本人も通訳の基本的な知識を持っていないことが多いためです。そこでまずは通訳をする本人が以下のことを理解し、またそれを社内で通訳を必要とする人たちに理解してもらうことが必要です。

 

1.バイリンガルと通訳の違いについて

2.通訳の種類とその特徴 

3.専門的な知識とスキルを身につける

4.通訳の仕事をするための準備

5.通訳しやすい環境を整える

 

 

 それではそれぞれ細かく見て行きましょう。

 

 

 

1.バイリンガルと通訳の違いについて


 バイリンガルとは、2つの言語でコミュニケーションが取れることを意味しますが、通訳にはより高度な語学力と専門的なスキルが求められます。通訳は、対象となる言語の意味、トーン、ニュアンスをリアルタイムで別の言語に正確に伝えることが求められます。この複雑な作業には、高いリスニングとスピーキングスキル、迅速な思考、そして会話の速度に合わせた素早い決断力が求められます。

 

 

2.通訳の種類とその特徴


通訳の種類は主に下記の3つです。そしてそれぞれにその難しさが異なります。

 

① 逐次通訳

話し手が話し終わった後、または話を一時停止した後に、その言葉を通訳します。迅速な思考力と理解力、正確な記憶力、メモの技術などが必要です。

 

➁ 同時通訳

話し手が話し続けている間に、通訳者が少し遅れて通訳をします。「聞く」と「話す」を同時にできる技術、話者が話す速度で訳す技術、このようなマルチタスクを同時に行う技術とそれを一定時間続けられる集中力が必要です。

 

③ウィスパリング

1人または声が届く範囲のごく少数の相手に対して、ささやき声や小さな声で通訳をする方法です。簡易的な同時通訳の手法です。ウィスパリングの場合同時通訳とは異なりイヤホンを使用しないことが多いため、周囲の雑音が集中の妨げとなることもあります。また聞き手が少数のため、聞き手が求めている情報を優先的にまとめて伝える技術が求められます。

 

 

3.専門的な知識とスキルを身につける


 通訳は、法律、医療、技術通訳など、特定の分野の専門知識を身につけることが必要です。社内での通訳の場合、その会議やプレゼンの内容に精通している必要があります。

 

 通訳をしたことのない人が、ある日突然全く関係も馴染みもない部署の会議に事前情報なしで放り込まれて「通訳して」と言われてできなかったというのはよく聞く話です。しかしそれはその人の責任ではありません。この状況は例えば会計担当者が、技術者の会議に出席させられて何の事前情報もなく「現在開発中の製品についてプレゼンして」と言われるくらい理不尽なことです。

 

 通訳をするのなら、その内容に関する知識を事前に学びましょう。そしてその必要性を関係者に理解してもらえるように働きかけをしましょう。

 

 

4.通訳の仕事をするための準備


 通訳をする前に、テーマについて調べ、提供された資料に目を通しましょう。資料が提供されない場合は1秒でも早く資料を出してもらえるように協力を呼びかけましょう。また業界特有の用語や略語をまとめた単語リストを作成することも効果的です。

 

 資料は両言語で提供されることが理想的ですが、どちらか一方の場合は練習だと思って自分で対訳版を作成しましょう。また資料は黙読するだけでなく、両言語で音読をし、音声情報に反応できるようにすること、また必要な用語をスムーズに声に出せるようにしておくことも重要です。

 

 通訳をするためになぜ資料が必要なのかと問われたら、前項で紹介した例を参考に、「資料なしで通訳させることの理不尽さ」を説明し、理解と協力を求めましょう

 

 

5.通訳しやすい環境を整える


 周囲に通訳の作業の複雑さや難しさを理解してもらい、通訳に協力的な職場環境を作りましょう。周囲に協力してもらうために、日頃から良い人間関係を構築しておくことも重要です。

 

 またできないことは「できない」と伝えることも大切です。例えば短期記憶力が不十分な状態では長文の通訳は不可能です。その場合、自身が通訳に不慣れであることを説明し、1文ごとに話を区切ってもらうよう伝えるなど、その時点での最善を尽くせるように環境を整える努力をしましょう。

 

 

 

✔ おわりに


 残念ながら、通訳はまだまだ誤解されやすい業種です。そのため、まずは自分が通訳という仕事をよく知り、通訳をしやすい環境を整えていくことが重要です。私自身これまで、通訳しやすい環境は自ら交渉して周囲の協力を得て築いてきました。

 

 しかしながら環境を整えただけでは良い通訳はできません。通訳しやすい環境を周囲にお願いしつつ、そのサポートに結果で応えられるよう、通訳技術の習得にも励みましょう。

 

 

 

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