通訳の技術と脳内③ 記憶する

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基本情報(イラスト化当時のものです)

担当:理解したことをメモを取りながら記憶する

性格:独創的

表情:不敵な笑み

アイテム:縦めくりのノートとペン

 

 こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。

 

 話を聞いて理解したら次はその内容をしっかりと記憶します。しっかりととは、一言一句正確に記憶するという意味です。また通訳はそう何度も聞き直すことはできません。一言一句正確に、しかも一度で暗記しなければなりません。

 

 試しに今見ているテレビで流れている会話を1分間、一回で完璧に暗記してみてください。

 

 いかがですか?やってみるとできないものですよね。1分間て思ったよりも長く感じたと思います。私も最初はそうでした。これが「英語ができるだけでは通訳はできない」と言われる理由のひとつでもあり、通訳訓練の初期段階でかなりの時間を割く部分でもあります。

 

 ちなみに1分間は、通訳を入れる際に話し手が話を切るのに割と多いタイミングだと思います。あくまでも私個人の感覚ですが。

 

 最初のうちは文章3つ覚えることもできませんでした。時間にすれば10秒程度です。集中して聞いているのに最初か最後が抜けてしまい、なぜできないのかと自分に苛立ち落ち込む、そんなことの繰り返しでした。

 

 この訓練は最初は10秒程度から始まり徐々に長くなって行きます。最後のクラスに進む頃には4分間程度の内容を丸々暗記できるようになるくらい、何度も繰り返し徹底的に鍛えられます。最後の頃は記憶力の訓練としてではなく通訳の作業としてなので、正確には少し異なりますが、初めて4分間できた時には感動しました。

 

 話を元に戻します。

 

 内容を覚えていないと当然ながら訳出ができません。これは記憶力も大切ですが、知識量が物を言う箇所でもあります。あらかじめ知っていることなら、覚えておきやすいのです。逆にまったく知らないことの場合は、記憶するのにとても苦労します。

 

 さてここで記憶の補助に使うのがメモ。通訳のメモは速記ではありません。あくまでも全体の記憶を補うためのもので自分にだけ分かればいいので、スタイルは人によって異なります。記号や絵を使ったり、キーワードの最初の文字だけを書いたりと、知らない人が見たら何のことだか分からない、そんなメモです。このメモをいかに自分に分かりやすく簡潔にかつ多くの情報を書き留めるか、それはこのコビトさんの独創性と記憶力にかかっています。

 

 彼女の性格が独創的なのはそのメモの取り方のためです。そして不敵な笑みの理由は、私自身が短期記憶に自信があるからです。

 

 私が訓練を受けたサイマルアカデミーでは、最初の2ヶ月間ほどはメモを取らずに通訳をしていました。可能な限りメモに頼らず、聞くことに集中して頭の中の記憶を優先的に活用する癖をつけるためです。

 

 その中で鍛えられたのがこのコビトさん。最初のうちは泣かされてばかりでしたが、慣れてきてからはこんな風に不敵な笑みを浮かべるようになりました。頭の中の短期記憶と独創的かつ簡潔なメモで、通訳する内容を記憶する。通訳者が内容を覚えているのは当然だと思われがちですが、内容を完璧に覚えるのはとても大変な作業です。地味で目立たないけど、実は一番スパルタ訓練を耐え抜いた、芯の強いストイックなコビトさんです。

 

 

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【About Erika】

職業:英語同時通訳者(個人/フリーランス)

現住所:東京

留学歴:3年(アメリカ)

特技:柔道(初段)、ピアノ(弾き語り)

楽しみ:正月の箱根駅伝、2か月に1度の大相撲観戦(テレビ)、年に数回の柔道国際・国内大会テレビ観戦、年に数回のブロードウェイミュージカル日本公演、不定期の札幌旅行