同時通訳者Erikaが選ぶ今年の英単語2016 Populism(ポピュリズム)

 こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。 

 

 今年のブログの更新も今回を入れて残すところあと2回となりました。この時期になると新語流行語大賞や今年の漢字等、その年を象徴する言葉や文字を選び、その年を振り返るのが世間の習慣になっています。そこで私も選んでみました、今年の英単語!(笑)

 

 私が選ぶ今年の英単語は、「Populism(ポピュリズム)」です。

 

 イギリスのEU離脱(Brexit)の国民投票や、アメリカの大統領選の時期によく聞いたこの言葉。まさに今年の世界の世相を表す言葉ではないかと思います。ただどうやら、この言葉の解釈は使う人により幅があるようです。まあ一般的にカタカナ語と言うのはそういうものが多い傾向にありますが。そこで今回は、私が思うPopulismの意味について語りたいと思います。

 

 Populismという単語はよくわからなくても、Popular(ポピュラー・人気の)という形容詞を知っている人は多いと思います。ご覧の通りこの二つの単語は親戚のような関係で、Realism(現実主義)、Socialism(社会主義)等、様々な単語に「-ism」が付くと「○○主義」という風になるように、Populismも(辞書上では「人民主義」ですが)「人気主義」といったイメージで捉えて良いと思います。

 

 私がポピュリズムについて考えるきっかけとなったのが、先日ある先生の政治学の講義を聞いたことでした。その先生は、ポピュリズムを「大衆迎合型政治」と表現していました。大衆の意見に賛同して支持を集める大衆迎合型の政治。確かにポピュリズムにはその一面があります。2009年の日本で起きた民主党政権交代選挙は典型的な大衆迎合型でした。国民の「もう自民党にはうんざり」という機運に民主党が乗っかった結果の政権交代。原動力は民主党の働きかけなどではなく、自民の不人気と言う国民感情でした。

 

 しかし私の理解では大衆迎合はポピュリズムの一面に過ぎず、それが全てではないと感じています。

 

 ちなみに、辞書上でのポピュリズムの定義はこうです。ある辞書では「(人民の利益を代表すると称する)人民主義」、また別の辞書では「人民主義(操作されやすい大衆を支持基盤とする政治運動)」となっています。

 

 つまりポピュリズムとは大衆の意思を尊重しそれに合わせているふりをしながら、その実は無知な大衆の意思をある方向に誘導し、特定の主義主張を大衆の真の意思だと思い込ませて支持を得るやり方であるとも取れます。それを踏まえた上で今年の代表的なポピュリズムを見てみるとどうでしょうか。

 

 Brexitやアメリカ大統領選が世界を驚かせる結果となった背景には、確かに大衆の意思があり、それに賛同して支持を拡大した政治勢力がありました。しかし私はその大衆の意思は自然発生したものではなく、その支持を得た政治勢力が扇動して大きくなったものだと解釈しています。まさに「操作されやすい大衆を支持基盤とする政治運動」です。

 

 この場合のポピュリズムは「大衆迎合型」ではなく、「大衆扇動型」です。そして歴史的に見て圧倒的に多いポピュリズムは、後者の「大衆扇動型」です。最も簡単なのは移民や特定の民族を憎悪の的にして大衆を煽り支持を広げる手法。ナチスドイツ、Brexit、トランプ氏、すべてに当てはまります。

 

 ですから「ポピュリズム=大衆迎合型政治」とするのは少し強引な気がします。無理に「ポピュリズム」と一括りにせず、「大衆迎合型ポピュリズム」と「大衆扇動型ポピュリズム」と使い分けるのが良いのではないかなというのが私の意見です。

 

 以上、私が選ぶ今年の英単語の解説でした。少し硬い内容になってしまいましたが、

おそらく来年以降も頻出する単語だと思いますので、ニュースで登場した時にでもこの記事を思い出していただけると幸いです。

 

 

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