こんなにある!鬼滅の刃と通訳・英語学習の共通点|全集中・通訳の呼吸

鬼滅の刃 英語 通訳 翻訳 全集中 学習 英文法 勉強 オンライン 講座 山下えりか

 

 こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。

 

 鬼滅の刃が人気です。その波は我が家にもバッチリ届いていまして、夫婦ともにコミックもテレビアニメも今のところすべて見ています。映画は人混みが怖いので、DVD待ちです。(うちの主人はコロナハイリスクな年齢のため。)

 

 私はコミックから読み始めたのですが、読み進めていくうちに共感できるポイントがとても多いことに驚きました。その多くはサイマルアカデミーでの通訳訓練や、通訳者としての日々の鍛錬に通じるもので、このブログを読んでくださる方ともぜひ共有したいと思うものばかりだったので、今回は「鬼滅の刃と通訳の共通点&共感ポイント」をテーマに記事を書きました。

 

 ここからは特に印象に残った鬼滅の刃のシーンと台詞を通訳目線で語って参ります。

 

 

✔ 第1巻 第1話 富岡義勇


 

泣くな 絶望するな

そんなのは今することじゃない

 

 

 サイマルアカデミーでの通訳訓練時代、基礎演習や通訳が上手くできずに黙ってしまった時、何度となく泣き出しそうになりましたし絶望しました。けれどそんな時、いつも自分に言い聞かせていました。

 

「泣くのは後。今は目の前の課題に食らいつけ。」

 

 そして授業の後、東京駅から静岡行きの高速バスに乗り、涙がこぼれないように目を閉じて気持ちを落ち着けていたのです。

 

 

✔ 第1巻 第5話 錆兎


  

お前は何も身につけてない 

何も自分のものにしていない

 

特に鱗滝さんに習った呼吸術“全集中の呼吸”

お前は知識としてそれを覚えただけだ

お前の体は何もわかってない

 

お前の血肉に叩き込め

 

鱗滝さんが教えてくれた全ての極意を

決して忘れることなど無いように

骨の髄まで叩き込むんだ

 

 

 「知識として知っている」と「分かる」と「使える」は全く別物。これはあらゆる知識や技術に通じるものです。

 

 この錆兎の台詞にぴったりな例が英文法。中学から高校までで一通り習うので、「知っている」人は多いでしょう。しかしそれぞれの文法や構文が実際にどのように使われどのような意味になるのか「分かっている」人は少数です。そしてそれを自分の言葉として「使える」人は更に少数です。

 

 「英文法は勉強したし分かっている、でも使えない」と悩む人は、この錆兎の言葉を心に刻み、反復練習を繰り返し、文字通り「骨の髄まで」叩き込んでください。

 

 

✔ 第1巻 第5話 真菰


 

“全集中の呼吸”はね

体中の血の巡りと心臓の鼓動を速くするの

 

そしたらすごく体温が上がって

人間のまま鬼のように強くなれるの

 

どうやったらできるかな(炭治郎)

 

死ぬほど鍛える

結局それ以外にできることないと思うよ

 

 

 鬼滅の刃の代名詞のように使われている「全集中の呼吸」。これは集中力が命である通訳の作業そのものです。

 

 通訳をしている時の集中力は自分でも異常だと認識しています。体温が上がり、全身、特に脳に血が急激に大量に巡るのを感じます。耳と脳に全神経が集中するのが分かり、例えば生理中で体調が悪い時でも、通訳の間だけは不快感も痛みも忘れています。その代わり、集中が切れた後は凄まじい疲労感に襲われます。

 

 そして技術と集中力がかみ合いこれほどの威力を発揮できるようにするためにはやはり、「死ぬほど鍛える」しかないのです。

 

 

 

✔ 第1巻 第7話 錆兎


 

努力はどれだけしても足りないんだよ

 

 「これで私は実力十分」と思ったら通訳は廃業すると心に決めています。

 

 

 

✔ 第3巻 第24話 炭治郎


 

まっすぐに前を向け!!己を鼓舞しろ!!

頑張れ炭治郎頑張れ!!

 

俺は今までよくやってきた!!

俺はできる奴だ!!

 

そして今日も!!これからも!!折れていても!!

俺が挫けることは絶対に無い!!

 

 

 通訳訓練でも現場での通訳でも、心が折れたら終わりです。心が折れそうな時、諦めてしまいそうな時、自分で自分を鼓舞して奮い立たせることができるかどうか。これも通訳者にとって大切な技術であり資質です。

 

 

 

 

✔ 第6巻 第51話 胡蝶しのぶ


 

炭治郎君が会得したのは全集中・常中という技です

 

全集中の呼吸を四六時中やり続けることにより

基礎体力が飛躍的に上がります

 

これはまあ基本の技というか初歩的な技術なので

できて当然ですけれども

会得するには相当な努力が必要ですよね

 

 

 全集中・常中というほどではありませんが、訓練と経験を重ねて行くと「常に通訳モード」や「常に勉強モード」という状態ができるようになります。

 

 例えば常に耳に入る話をリテンションしていて、不意に「今何て言ってた?」と誰かに聞かれた時に確信を持ってリプロダクションすることができます。

 

 また日本語でも英語でも何かを聞いたり読んだりしている時には「あ、この表現はこういう時に使える」と考えていたり、日本語字幕を付けながら映画やドラマを観ている時に、「私ならこう訳すな」と考えながら見ていたりします。

 

 つまり私の場合は常に全集中の6から7割程度の状態をキープしているということです。

 

 そしてこの台詞の中の「これはまあ基本の技というか初歩的な技術なのでできて当然ですけれども 会得するには相当な努力が必要」というのは、特に通訳技術のリテンション・リプロダクションに通じると感じました。リテンション・リプロダクション(正確に記憶して正確に再現する技術)は通訳技術の基礎の基礎ですが、これを会得するのは本当に難しいですし相当な努力が必要です。この壁を超えられずに通訳訓練を断念する人は本当に多いのです。

 

 

 

 

✔ 第8巻 第66話 炭治郎


 

悔しいなぁ

何か一つできるようになっても

またすぐ目の前に分厚い壁があるんだ

 

凄い人はもっとずっと先の所で戦っているのに

俺はまだそこに行けない

 

こんな所でつまずいてるような俺は 俺は...

 

 

 通訳訓練でも現場での通訳でもこの繰り返しです。訓練にも勉強にも終わりはありません。

 

 

 

✔ 第8巻 第69話 炭治郎


 

全集中の常中で体力は向上しましたが

それでも足りない...

 

常中ができれば

日一日と体力が上昇してゆくとのことだったけど

一瞬で強くはなれないんです

 

...あの時俺がもっと強かったら

一瞬で...煉獄さんを助けられるくらい

強くなれる方法があったら...

 

ずっと考えていました

だけどそんな都合のいい方法はない

近道なんてなかった

 

足掻くしかない

今の自分ができる精一杯で前に進む

どんなに苦しくても悔しくても

 

 

 英語学習も通訳訓練も同様に、近道はありません。足掻くしかない。どんなに苦しくても悔しくても、その時の自分ができる精一杯で前に進んだ先にしか、成長はありません。

 

 

 

 

✔ 第17巻 第150話 富岡義勇


 

今己が圧倒される強者と久々に出会い

短時間で感覚が鋭く錬磨されるのがわかった

 

閉じていた感覚が叩き起こされ

引きずられる

強者の経つ場所へ

 

ぎりぎりの命の奪り合いというものが

どれ程人の実力を伸ばすのか

理解した

 

 

 百の練習より一の本番。これにつきます。しかしながら一の本番で爆発的に実力を伸ばすためには、百かそれ以上の練習が必要です。

 

 

 

✔ 第17巻 第150話 炭治郎


 

落ち着け!!

考えろ 焦るな

絶対に思考を放棄するな

 

 

 通訳中にプチパニックを起こした時の合言葉!

  

 

 

✔ 第17巻 第151話 炭治郎の父


 

初めのうちは覚えなければならない

動きや感覚を拾わなければならない

 

五感を開き自分の体の形を血管の一つ一つまで認識する

 

この時は本当に苦しい

このままもがき続けても先が行き詰まっているとしか思えない

 

たくさんのことを覚え吸収した後は

必要でないものをそぎ落とす

その動きに必要なものだけ残して閉じる

 

やがて体中の欠陥や筋肉の開く閉じるを

まばたきするように速く簡単にこなせるようになる

 

その時光明が差す

道が開ける

 

頭の中が透明になると“透き通る世界”が見え始める

しかしこれは力の限りもがいて苦しんだからこそ届いた“領域”

 

俺もそこに行けるかな?(炭治郎)

 

弛まぬ努力を続ければな

 

 

 たくさん覚えて、たくさん練習して、自分のものにしたら、必要なものだけ残して無駄をそぎ落とす。だから「できる人」は効率的に見えるのです。

 

 多くの人はその無駄をそぎ落とした部分だけを欲しがります。しかしその部分は、そぎ落とした無駄がなければ習得できなかったものばかりなのです。そしてこういう人は「たくさん練習」ができなくてそこでやめてしまうことが多いように思います。炭治郎のお父さんが言うように、ここは本当に苦しいからです。しかしそれを超えなければ会得できない技術や能力があるのです。

 

 鬼滅の刃で最上級の技術を持つ剣士たちがそれぞれの力を最大限引き出せた時に生じる「透き通る世界が見える」という感覚もまた、通訳に通じています。通訳をしている時に生ずる、”trans language”という現象です。

 

 ”trans language”は直訳すると「超越した言語」です。通訳をしている時の頭の中は常に日本語と英語を行ったり来たりしています。その感覚が研ぎ澄まされると、「日本語でも英語でもない透明な言語」で両方の言葉を高速で処理できるようになって行きます。これが通訳の「透き通る世界」です。

 

 

 

 

✔ 第22巻 第193話 作者コラム


  

できることと、使いこなすこと、極めることは

それぞれ違います。

 

繰り返し練習して

決まった動作が“できる”ようになったら、

それをどんな体勢や状況でも

適材適所で出せるようになるのが

“使いこなす”ことです。

 

さらにその使いこなしている技を

他の誰よりも速く強く

常に最大限の力で出せるよう練り上げることが

“極める”ことです。

 

 

 通訳の場合「他の誰よりも速く強く」は不要かもしれませんが、「常に最大限の力で出せるように練り上げる」は重要です。できることを使いこなし極めるためには、ここまでも書いてきた通り、相当な努力と鍛錬が必要なのです。

 

 

 

✔ 通訳の呼吸の型


 最後に、「通訳の呼吸の型」を考えてみました。

 

 

壱ノ型 リテンション

すべての基礎である、話を正確に記憶する技術

 

弐ノ型 リプロダクション

聞いた話を正確に再現する技術

 

参ノ型 シャドーイング

話を聞きながら正確にほぼ同時に繰り返す技術

 

肆ノ型 要約

話の一番大事な部分を瞬時に見抜く技術

 

伍ノ型 パラフレージング

話の内容を変えずに言葉だけ変える技術

 

陸ノ型 メモ取り

記憶をより正確にするための技術

 

漆ノ型 逐次通訳

数十秒から数分間の話を覚えて正確に訳す技術

 

捌ノ型 ウィスパリング

周囲の雑音と戦いながら音を拾い必要最低限の内容を同時に訳す技術

 

玖ノ型 同時通訳

話を聞きながら同時に訳す技術

 

 

参考:【学習法】英語&通訳の勉強方法まとめ

 

 

うーん...我ながら結構良い感じではないかと、(笑)。

 

 

✔ おわりに


 鬼滅の刃は何かを会得し極めようと努力する人であれば共感できることが多い作品だと思います。

 

 私自身、「通訳者になりたい」と心を燃やしひたすら鍛錬に励んだ訓練時代を思い出しましたし、これからも実力の維持と向上のために日々精進しようと気持ちを引き締めるきっかけにもなりました。

 

 呼吸を整えるように心を整える良い機会を与えてくれる、とてもおすすめの作品です。

 

 

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【About Erika】

職業:英語同時通訳者(個人/フリーランス)

現住所:東京

留学歴:3年(アメリカ)

特技:柔道(初段)、ピアノ(弾き語り)

趣味:料理、お菓子作り、食器屋巡り

楽しみ:正月の箱根駅伝、2か月に1度の大相撲観戦(テレビ)、年に数回の柔道国際・国内大会テレビ観戦、年に数回のブロードウェイミュージカル日本公演、不定期の札幌旅行