【通訳訓練】図で見て解るリテンション(短期記憶)|何ができていないのかを知る

通訳 リテンション リプロダクション できない 原因 練習 オンライン 通訳講座 山下えりか 

 

 こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。

 

 「聞いた話を一言一句正確に記憶して(リテンション)、一言一句正確に再現する(リプロダクション)」は、通訳の基礎技術です。正確な通訳ができるかどうかはこの技術の精度にかかっていると言っても過言ではないほど重要な、通訳者の必須スキルです。

 

 リテンション&リプロダクションについては下記の通り、これまで様々な角度から記事を書いてきました。

 

 

 しかしながら現在習得に向けたトレーニング中の方には言葉で説明してもなかなか伝わりきらないと感じることが多いため、今回は具体的なイメージを持ってもらえるようにするために、図解することにしました。過去の記事の内容と合わせ、リテンションへの理解を深めていただけましたら幸いです。

 

 


 

✔ 理想的なリテンション


 下の図は私の思う理想的なリテンションです。クリスマスが近いので、定番ソングの”Santa Clause is coming to town”を例に図を作成しました。

 

 緑の枠は音の記憶、緑枠の内側の白文字は言葉の記憶、赤枠の日本語は意味の記憶、イラストや吹き出しは情報の記憶を示しています。先日の記事「リテンションができない=記憶力が悪い」ではない|リテンション習得に必要な4つのスキルでも解説した通り、この4つの記憶の全てが重なり合い、正確なリテンションが可能になります。

 

 それでは、ひとつひとつ見て行きましょう。

 

 

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✔ 音の記憶


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 「聞いたことを覚える」と言うと、多くの人はその音を正確に記憶しようとします。しかしこの場合、取れているのは「記憶の枠」である音だけとなってしまうケースが多く見られます。イメージとしてはこの図のような感じです。

 

 そして内容の理解を伴わない場合これは非常にあいまいな記憶であることが多いため、リプロダクションをするのにも訳をするのにも全く役に立たない状態です。

 

 

✔ 音+言葉


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 音だけを正確に覚えようとするのと同じくらい多いのが、音と単語の並びだけを覚えようとするケースです。もちろん正確なリテンションのためにはどちらも必要不可欠なことですが、この場合は音と単語を覚えることに集中するあまり、発言の意味を考えずに記憶しようとしてしまいがちです。そうするとリプロダクションはできたとしてもいざ訳してくださいと言われると訳せないことが多いため、やはり通訳者のリテンションとしては不適切です。

 

 

✔ 音+意味


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  リテンションの指導をしていて非常に多いのがこのパターン。元の発言が「なんとなく」記憶に残っていて、「なんとなく」意味が分かっているという場合です。当然訳の精度はその「なんとなく」の度合いに左右されます。それで通用する場合は問題ありませんが、通訳者に求められるのは「100%の理解と100%の訳出」です。どちらも「なんとなく」ではいけませんから、これも不十分です。

 

✔ 音+言葉+意味


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 音と言葉が正確に記憶できたところに正確な理解が加わると、リテンションの精度はぐっと上がります。これで十分な通訳ができると言うこともできますが、これではまだ不安が残ります。この段階での理解は表面的な理解である可能性があるためです。確信を持って訳を出せるようにするためにはもう一歩理解を深め、それを確認しておく必要があります。それを可能にするのが最後の「情報の記憶」です。

 

 

✔ 音+言葉+意味+情報


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 最初に載せた画像に戻ってきました。音、言葉、意味を正確に記憶したら、それを情報の記憶で補強します。この情報の記憶とは、この図の吹き出しに書いてあるような知識や、イラストのようなイメージのことです。

 

 例えばタイトルに入っている通りクリスマスと言えばサンタクロースです。サンタクロースを含めクリスマスに関連する映像や画像を思い浮かべます。そしてこの曲のメロディーやリズムに乗せて音と単語を覚えるのも有効ですし、「クリスマスソング→クリスマスが近い→すぐ近い未来だからbe + 動詞ing」が使われていると文法知識で言葉の記憶を補強できます。またこの曲自体とても有名な曲ですから、そのタイトルを思い出せば訳で間違えることもありません。

 

 こうして頭の中にイメージを描き、それに関連する知識をかき集めて形にすることで、聞いたばかりの自分ではない誰かの発言を自分のことのように別の言語で表現することができるようになるのです。

 

 

✔ 通訳はすべてが同時進行のマルチタスク


 こうして書くと、それぞれの記憶は別々にやれば良いのかと思われるかもしれません。それは違います。通訳は時間との勝負ですから、「音と言葉を覚えてから理解する」では遅すぎます。正解は「音と言葉を覚えながら同時進行で理解していく」です。

 

 そしてこれはリテンションのみにとどまりません。「通訳のコビトさんシリーズ」でも紹介した通り、逐次通訳であれ同時通訳であれ、通訳とは常に10以上の作業を同時に行わなければならない、究極の脳の分業を必要とする作業なのです。

 

 その通訳作業の土台となるのがこのリテンションの技術です。訓練は苦しいですし習得には時間も労力もかかります。しかし努力を続ければ結果は必ずついて来ますから、焦らずにそして諦めずに頑張ってほしいと思います。

 

 


 

 

✔ おわりに


 クリスマスソングを題材にリテンションの講義などと無粋なことをして失礼いたしました(笑)。最後に”Santa Clause is coming to town”の動画を載せて終わりにします。

 

 それではみなさま、Merry Christmas!!

 

 

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