リモート会議のスムーズな逐次通訳に必要な「要約技術」と実践例

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 こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。

 

 リモート会議の逐次通訳をしていると、日本側または英語話者側だけで話が進んでしまい、「今のところ要点だけ教えてください」と言われる、または言われなくても流れで要約せざるを得ないという場面によく出くわします。同様のことは対面での通訳でも無くはないのですが、リモートでは相手が目の前にいないからなのかついつい同言語での話し合いが長くなりがちな印象です。

 

 要約はリテンション・リプロダクション(正確に記憶し正確に再現する)やメモとり、パラフレーズ(内容を変えずに表現だけ変える)などと並ぶ重要な通訳技術です。今回はリモート会議をスムーズに逐次通訳するために必要な要約の技術とそのやり方について、自身の経験をもとにお話しします。

 

 

✔ 要約モード


 先述のように日本側または英語話者側だけで話が進んでしまうという経験を繰り返すと、「あ、これは長くなる」というタイミングが相手の話し方で分かるようになります。このような時には、特別意識しているわけではありませんが、頭(理解・記憶)と体(メモ)が「要約モード」に切り替わります。(思ったよりも短く済んだ場合は普通に逐次通訳をします。)

 

 私の「要約モード」とは具体的に以下のような状態です。

 

  • 直前の内容を念頭に、それをもとに会話が進んでいることを意識する
  • 聞き手が欲しい情報を意識しながら話を聞く
  • 一言一句正確なリテンションではなくキーワードと話の流れを重視
  • メモをとる際には発言者の名前(イニシャル)を書いておく
  • 発言者の立場を把握する

 

 ここから先は解説を簡素化するために、「直前に日本語での発言がありそれを英語に訳し終わった後、英語話者側で話が続いてしまった状況」と仮定してお話しします。

 

 

✔ 直前の内容と話の方向性の把握


 英語サイドの話が長くなりそうだと感じたら、まずはその話が何を前提にしているのか、どこから繋がっているのかという意識を持ちながら話を聞きます。つまりここでは、直前の日本語の発言内容や、そこまでの話の内容を頭の中で再確認します。話の筋をヒントにすることで、長い話でも内容を正確に理解し記憶することができます。

 

 そして英語サイドの立場や主張を考慮し、その話がどの方向へ流れて行きそうか、それが難しければ「この方向には行かないだろう」といったことを予想することで、余裕をもって話を聞く体勢を整えます。

 

 

✔ 聞き手が欲しい情報を意識する


 次に意識するのは、その英語サイドの話の中でどれが日本側が欲しい情報であるかを意識しながら話を聞くことです。

 

 片側だけで話が進んでしまう場合、発言内容が多く時間的にも数分間の長さになることが多いので、通訳をする時のように一言一句正確に記憶するのは難しくなります。要約モードでは、聞き手(ここでは日本側)に必要な情報と話の全体の流れを中心に据えて内容を記憶して行きます。

 

 例えば直前に日本側が質問をしていた場合、英語サイドは議論をしながらその答えを導き出すことが考えられます。すなわち英語サイドで展開されている議論の全体像を把握しつつ、話の中で日本側が求めている答えが出てきた時には特にそこに注意を払いながら聞くことが必要となります。

 

 ここで重要な情報の選り分けができるようにしておくためにも、訓練段階での要約技術の強化は必須と言えます。

 

 

✔ 発言者の把握


 片側だけで話が進むということは、発言者が複数存在するということです。そこで「誰が何を言ったか」の把握が重要となります。

 

 私はこの場合、メモをとる際に発言者の名前またはイニシャルをメモの上に書いておくようにしています。声だけで誰かが分からなければ、パソコン画面で誰が発言中になっているかを確認します。

 

 更に、そこまでの話の中で、あるいはは発言の内容によって、誰がどのような立場から発言をしているのかを把握できると理解も記憶もしやすくなります。

 

 

✔ 情報整理と最終確認


 話が一段落したら、できるだけ間髪入れずに「確認させてください」と間に入ります。続けて、「Aさんは○○、Bさんは▲▲、Cさんは□□、というご意見で、最終的に◆◆◆という結論、ということでよろしいですか」と英語サイドに確認をします。

 

 ここで重要なのは、この時までに確認すべき内容(聞き手に伝えるべき内容)を頭の中でまとめておくことです。聞き終わってからまとめていては遅すぎますし、考えている間に更に話が進んでしまう恐れもあります。これは「頭の中で訳しながら話を聞く」という逐次通訳の作業と同じです。

 

 確認した内容に問題がなければ同じ内容を日本語に訳します。

 

 最後に確認作業を入れることで情報の整理をし伝達ミスを防ぐことができるだけでなく、一旦自分の言葉で訳す内容をアウトプットすることで、スムーズに訳すことができます。

 

 

 

 

✔ おわりに


 通訳技術と言うとリテンション・リプロダクションやメモとりなどが注目されがちですが、このように要約の技術もまた同じくらい重要な技術です。特にリモート会議が増えている今、通訳者だけでなく会議に参加するすべての人に必要な技術とも言えるでしょう。

 

 そして要約によって要点を過不足なく伝えきるためには、記憶するためのリテンション、情報を再現するためのリプロダクション、内容を変えることなく自分の言葉でまとめるためのパラフレーズ、記憶を効果的に補助するためのメモとり、言語変換技術と言った、すべての通訳技術が必要です。通訳でも要約でも、基礎訓練が重要であることは変わりません。

 

 今回紹介したのはあくまでも私のやり方ですが、誰かのお役に立てれば幸いです。

 

 

 

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【About Erika】

職業:英語同時通訳者(個人/フリーランス)

現住所:札幌市

留学歴:3年(アメリカ)

特技:柔道(初段)、ピアノ(弾き語り)

趣味:料理、お菓子作り、食器屋巡り