【短期記憶をUPしよう④】読解力・聴解力・総合的な理解力を鍛えよう(リテンション・リプロダクション強化のメリット)

傾聴力 ワーキングメモリ 通訳 記憶力 短期記憶 リテンション リプロダクション マルチタスク 話を憶えられない オンライン 通訳講座 山下えりか 

 

★ こんな人に読んでほしい


  • 聞き上手になりたい
  • 相手の話を遮ってしまう癖を直したい
  • 話を聞いたそばから忘れてしまう
  • とにかく記憶力が悪い
  • 相手の話すスピードに理解が追い付かない
  • 聞く・理解する・記憶する・考える...を同時に行うマルチタスクが苦手
  • 英語でのコミュニケーションに関して上記のような悩みを抱えている

 

 

 こんにちは、札幌在住の英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。ご訪問ありがとうございます。

 

 聞いたことを正確に記憶(リテンション)して正確に再現(リプロダクション)する技術は、正確な通訳に不可欠です。

 

 しかしながら人の話を一言一句正確に記憶するというこの技術は日常的に必要とされることが少ないものなので、これまで私は通訳をする人にのみ必要な技術だと考えていました。

 

 ところがリテンション&リプロダクションに重きをおいたオンライン講座を実施していく中で、通訳の必要がなくともこの技術を求める人が少なからずいることを知りました。

 

 現在、英語力強化のため、また日本語での記憶力と理解力向上のため、総合的なコミュニケーション能力強化のため等々、通訳以外の様々な理由でリテンション講座を受講される方が増えています。

 

 リテンション&リプロダクションのトレーニングのやり方は実にシンプルで、「聞いた話を聞いた通りに(同じ言語で)繰り返す」というもの。しかしそれが実はとても難しく、身につけるのが困難なスキルでもあります。

 

 私のレッスンでは、この演習を日本語のみ、英語のみ、または日英両言語で実施し、受講生の記憶の癖苦手分析し、強化が必要な部分を指摘したり、改善方法の指導などをしています。

 

 

 


 

 

✔ リテンション強化のメリット


 様々な理由でリテンション技術を求める方たちとのレッスンを進めて行く中で、リテンションの強化には日本語・英語を問わず言語の使用やコミュニケーション能力の向上において様々なメリットがあることが見えてきました。そのメリットとは次のようなものです。

 

● ワーキングメモリ(短期記憶力&意識制御)

● 傾聴力

● 読解力

● 音声の情報処理能力&速度

● 集中力

● 表現力

● 英語の弱点の洗い出し

● 英文法・構文力

 

 前回の記事 【短期記憶をUPしよう③】傾聴力を身につけて聞き上手になろうでは、リテンション&リプロダクションのトレーニングによる「傾聴力(聴く力)」の強化とそのメリットについてお話ししました。今回のテーマは「理解力(読解力・聴解力)」です。

 

 

 

✔ 読解力・聴解力とは


 読解力・聴解力とは、どちらも「理解する力」のことで、「文章を読んで理解する力」を「読解力」「話を聴いて理解する力」を「聴解力」と呼びます。

 

 したがってリテンションで鍛えられるのは厳密に言えば「聴解力」です。

 

 しかしながら一般的に「物事を理解するために必要な能力」という意味では「読解力」の方がより幅広く使われていて、話の内容や意味を「読み解く」という意味では「読む」でも「聴く」でも必要なスキルは同じと言えます。そのため「理解する力」について話をする場合、私は「読解力」の方をよく使います。

 

 その一方で「読解力」と「聴解力」には決定的な違いがあります。それは「読む」は自分のペース、「聴く」は相手のペースでする作業であるということです。つまり「聴解力」では「相手の話すスピードで話を聞いて理解する力」が必要となり、情報が入ってくる速度を自分でコントロールできないという分、「読解力」と比べて「聴解力」の方が習得が難しいと言えます。

 

 

 

✔ リテンション力UPと読解力UPの関係性


 私はよく、リテンションは「木も見て森も見る作業」と受講生に伝えています。つまり、「木=ひとつひとつの単語の意味や情報」にも「森=話の全体の意味や内容」にもまんべんなく気を配ることで、話をより深く正確に理解し記憶することができるのです。

 

 そんなリテンションのトレーニングは、読解力の強化にも最適です。その主な理由は次の通りです。

 

1.単語レベルの理解力を強化できる(ひとつひとつの単語の理解=木)

2.内容を把握するための論理力を強化できる(情報の点と点をむすぶ力=森)

3.相手の話すペースで内容を正確に理解できる(聴解力)

 

 それではひとつずつ見て行きましょう。

 

 

✔ 単語レベルの理解力を強化できる(ひとつひとつの単語の理解=木)


 まず前提として、人は理解できたことしか記憶することができません。耳コピで音だけを覚えたところで、理解が伴っていなければそれはコミュニケーションにも通訳にも役に立たないのです。

 

 つまりリテンション&リプロダクションの訓練を通して聞いた話を正確に記憶する力を鍛えることは、話を正確に理解する力を鍛えることにつながります。

 

 それでは「理解」とは何なのでしょうか。リテンションや英語の指導をしていて日々感じるのが、「理解=聴いた単語を全部知っている」と勘違いをしている人が非常に多いということです。

 

 よく聞く英語の悩みのひとつに、「聞き取れているのに意味が取れない」というものがあります。この原因は、「聞いた話の中に知らない単語がない」けれど「その単語や情報を理解できていない」というものです。

 

 恥を忍んで、過去の私の失敗を例にあげて説明しましょう。十数年前、私がサイマルアカデミーで通訳訓練を受けていた頃のことです。

 

"It is a critical moment."

 

この一文を訳すように指名された私は、「今、批判が高まっています」と訳しました。正しくは、「今は重大な局面です」でした。

 

今思い出しても本当に恥ずかしい話ですが、なぜこんな的外れな訳になってしまったかと言うと、当時の私が"critical"を「批判的な」の意味でしか理解できていなかったからです。「重要な・重大な」の意味を知らなかったわけではありませんでしたが、「批判的な」の意味の印象ばかりが強く、文脈に沿ってこの単語意味を理解することができていませんでした。"critical"はこのほかにも、「危機的な」や「決定的な」という意味でも使われます。

 

ちなみにこの訳を聞いた先生には鋭い視線を向けられ、「言葉面しか追っていないからそういう訳になる」と戒められました。今でも私にとって大事な教訓です。

 

 この私の失敗談からも分かるように、例え聞いた単語全部を知っていてもその正確な意味や使われ方まで理解ができていなければ内容の理解はできません。またここでは英単語を例にあげましたが、同じことは日本語でも起こりえます。

 

 リテンション&リプロダクションで記憶の確認作業を繰り返すことで、ひとつひとつの単語の意味や解釈を確認する習慣を身につけることができます。こうして単語単位での言葉へのアンテナの感度を上げることが、読解力向上へとつながります

 

 

✔ 内容を把握するための論理力を強化できる(情報の点と点をむすぶ力=森)


 「読解力」には情報の点と点をつないで話の内容や意味を正確に理解する能力(森全体を見る力)も必要です。これはつまり、前述の単語レベルで理解した複数の情報やそれ以前に話に出た情報を、文脈や背景情報に沿って論理的に理解し解釈する力のことです。

 

 先ほどの私の誤訳の例で考えてみましょう。

 

 "critical"という単語ひとつだけをとれば、「批判的な」という意味での理解は間違いではありませんでした。"moment"にも、「瞬間・場面・局面」と複数の意味が存在します。

 

 "critical moment"をどう解釈しどう訳すかは、この前にどのような"moment(瞬間・場面・局面)"について話があったのか変化します。

 

 この時にサイマルアカデミーで使っていた教材では、このフレーズの前に当時の世界情勢の話がありました。そのためここでは「重大な局面」という訳し方が自然です。

 

 しかし例えばある企業が新製品の発表の場でこの言葉を使うのであれば、「これは決定的な瞬間です」と訳すでしょうし、政府が重要政策の成果を見極める場面であれば「今が正念場です」と訳すでしょう。

 

 つまりここに"moment"が入っていた時点で"critical"が「批判的」という意味になる要素はなくなっていたのですが、それに気づけなかったのは当時の私の未熟さと勉強不足が原因です。(返す返すも本当に恥ずかしい...)

 

 前に出た情報や背景情報と今聞いている情報をつなげて総合的に理解するためには、話の筋や方向性を的確に読み取る論理力が必要です。1文単位でのリテンション&リプロダクションのトレーニングでは、その前の情報とのつながりを意識しながら目の前の単語と情報を理解し解釈する力を鍛えることができます。これもまた読解力の強化につながります。

 

 

✔ 相手の話すペースで内容を正確に理解できる(聴解力)


 先述の通り「聴く」は相手の話すペースで行う作業のため、会話や音声情報に対する理解力を高めるためには音声のスピードで理解するトレーニングが必要です。

 

 リテンションのトレーニングでは音声を聞いてそれを記憶し再現することで記憶力を鍛えます。記憶のためには理解が不可欠なので、このトレーニングは「聞こえてくる音声のスピードで理解する力(聴解力)」の強化にもつながります。

 

 


 

✔ おわりに


 リテンションのスキルはとても実用的で非常に便利なものですが、一朝一夕で身につくものではありません。習得には地道で継続的なトレーニングが必要です。しかしながら一度身につくと、目の前に新しい世界が開けるくらい、生活に仕事に様々な恩恵をもたらしてくれる技術です。

 

 先にその「新しい世界」を体験し感動した者として、ひとりでも多くの人がリテンションを習得し、その実用性と「できる楽しさ」を体験してくれることを心から願っています。

 

 

 

 

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【About Erika】

職業:英語同時通訳者(個人/フリーランス)

現住所:札幌市

留学歴:3年(アメリカ)

特技:柔道(初段)、ピアノ(弾き語り)

趣味:料理、お菓子作り、食器屋巡り