こんにちは、札幌在住の英語同時通訳者でオンライン英語・通訳講師の山下えりかです。ご訪問ありがとうございます。
【追記:2024/5/30】最新のGPT-4oでの通訳のやり方とレビューは下記記事にてご覧いただけます。
このブログでも何度か話題にしているChatGPTのスマホアプリに、先月新機能が追加されました(有料ユーザー向け)。その新機能とは、「音声会話」ができる機能です。そしてこの機能のリリースを知って真っ先に思ったのが、「これは...ChatGPTが通訳できるってことじゃない?」でした。
ChatGPTはプロンプト(指示や質問)の書き方でその動きが変わります。ただ会話をするのではなく、通訳をするようにプロンプトを書けばきっとできると確信し、すぐに研究を開始しました。
「御託はいいから使い方を知りたい&通訳を聞かせて」というせっかちな方は、どうぞこちらの動画をご覧ください。
【YouTube動画】ChatGPTアプリで音声通訳&文字起こしができる!設定方法&プロンプト大公開!◆GPT-4 & Voice Conversations機能活用法
通訳が始まるのは01:20あたりからです。
✔ ChatGPTが通訳になる魔法の言葉
さて、研究に研究を重ねた結果、完成したプロンプトがこちらです。
あなたはプロの優秀な日本語と英語の通訳者です。
英語の入力を日本語に翻訳してください。日本語の入力を英語に翻訳してください。
質問の入力があった場合は質問を翻訳してください。
翻訳には丁寧な表現を使ってください。
翻訳以外の言葉は付け加えないでください。
なぜこのようなプロンプトになるのかは今後また別の機会に解説します。とにかく今回は、ChatGPTに通訳ができるということ、そしてその精度について知ってほしいと思います。
✔ ChatGPTで音声通訳する設定方法
ChatGPTで音声通訳をするために必要な設定は次の通りです。動画でも解説しているので文字ではわかりづらいという方は動画をご覧ください。
※前提として、有料ユーザーであることと、使用環境はスマホのアプリであること、またGPT-4の使用が必要です。
1.スマホでChatGPTのアプリを起動する。
2.左上の三本線をタップし「Settings」へ進む。
3.「Settings」で「Beta Features」を選択。
4.「Voice Conversations」をオンにする。
5.「Settings」に戻り「Voice」を選択。
6.「Voice」で好きな声を選択。
7.ホーム画面に戻り、GPT-4を選択。
8.「Message」に上記プロンプトをコピペして送信。
9.画面右上のヘッドホンアイコン「🎧」をタップ。
10.音声入力をするとChatGPTがその入力を音声で翻訳してくれます。
✔ 私の感想
実際にこれを使ってみての私の感想はただ一言、「すごい」でした。訳の精度も音声出力の精度も完璧とは言い難いものの、十分ビジネスの場でも通用する精度だと思います。聞く側が「今のはこういう意味だな」とある程度頭の中で修正をしながら聞くことができれば、既に問題なく使えるレベルです。もちろん、セキュリティの問題などもありすぐにビジネスで使うのは難しいとは思いますが。
ChatGPTが世間で話題になり始めた初期の頃、ChatGPTが原因で仕事を失った海外のライターさんやコピーライターさんの話を目にしました。「ChatGPTが出すものの品質が君の仕事に遠く及ばないのはよく分かっている。でもコスパを考えると、ChatGPTでいいかという結論になった。」と言われ契約を打ち切られたという話はとても印象的でした。そして今回、通訳でも同じことが目前に迫っていると強く感じました。
✔ 私がこれを公開する理由
現役の通訳者である私がこのような機能の研究をしこうして公開するのは自殺行為ともとれる行動であることは自覚しています。しかしなぜ今回これを公開したかと問われれば、「誰かがやるなら私がやる」と強く思ったからです。
ChatGPTの使い方については現在非常に多くの人が研究を重ねていて、ChatGPTを通訳として使う方法は私が公開しなくてもそのうち誰かが公開するだろうという確信がありました。それならばこのサイトを見てくれている人たちにいち早く現状をお伝えしたいと思いました。少しでも早く現状を把握し、次の考える材料にしてほしいと思いました。
またそれと同時に、これは多くの人の役に立つ機能であると感じたからというのも理由のひとつです。仕事柄コミュニケーションの難しさを常々目の当たりにしていて、言葉の壁というものの高さと厄介さはよく知っています。この技術が少しでもコミュニケーションの円滑化に繋がるのであれば、ぜひ多くの人に知ってもらい、役立ててほしいと考えました。
✔ 私たちはどう生きるか
とは言え通訳を生業にしている者としては、ただ黙って仕事がなくなるのを待つわけにもいきません。このChatGPTの通訳機能の研究と同時進行で、私たち通訳者が生き残って行く方法も考えてきました。これについては次回以降の記事で考察したいと思います。
✔ おわりに
今回の研究は生きた言葉を扱う通訳の仕事でさえもAIの影響を受けるということを明らかにする結果になりました。恐怖を感じなかったと言えば嘘になります。しかしながら、私には恐怖よりも感動の方が大きかったのも事実です。今まさに私たちは未来を生きていると実感できた出来事でした。
これからも新しいものを恐れずに楽しんで行けるように、日々学び続けて行こうと思います。
次の記事:通訳技術習得には時間も努力も必要◆初期の「なぜできない」は「できなくてあたりまえ」
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