【コラム#4】「簡単に英語ができるようになりたい人」へ

 こんにちは、同時通訳者英語指導者山下恵理香です。

 

 今回は以前中高生を対象にした英語セミナーで実施した事前アンケートでいただいた質問への回答集をご紹介します。「簡単に英語ができるようになりたい人」へ、私からの渾身のメッセージです。

 

--------------回答集抜粋ここから----------------

 

 回答を読んでもらう前に私からひとつ、みなさんに伝えたいことがあります。今回「簡単に英語ができるようになるにはどうしたらいいか」という内容の質問が目立ちました。なので先に書いておきます。簡単な方法はありません。みなさん、部活や習い事をしている人が多いと思います。簡単に強くなりましたか?簡単に上手くなりましたか?それと同じことです。また強さや上手さを支えるためには、筋トレや基礎練習が大切ですよね?みなさんが学校で習っている英文法や英単語は、英語の筋トレと基礎練習です。まずは学校の勉強で英語の筋力、体力、基礎力をつけ、そこから様々な機会を作って実践力を身に付けてください。当然、時間はかかりますし努力も必要です。しかしやればやっただけ結果はついてきます。スポーツも習い事も勉強も、基本は同じです。

 

1.英語に興味を持ったのはなぜですか。

 

a)中学最初のテストで良い点を取っていい気になったからです(笑)

 

2.なぜ、通訳者になろうと思ったのですか。

 

a)英語が大好きだからです。

 

3.英語の勉強のしかた、覚え方が知りたいです。/英単語を読むのも覚えるのも苦手です。何かコツがあったら教えてください。

 

a)教科書の丸暗記が一番効率的です。文法、単語の音と意味、すべてを一度に覚えられるからです。お薦めの方法は、音読です。できれば英語の教科書のCDを購入しましょう。学校の授業でやり終わった箇所を毎日1レッスン分、CDを流しながら同時に教科書を読み上げます。レッスンの長さにもよりますが、1日3~5回ほど繰り返しましょう。文章と単語を全てを覚えるまで3日~1週間ほど、繰り返し同じ箇所をやりましょう。鼻歌のように教科書の英文を口ずさむようになるくらいまでやりこみましょう。単語のスペリングは手を動かさなければ覚えません。覚えるまで書き取りをしましょう。音読による教科書の丸暗記は、元Google本社副社長兼Google日本法人社長の村上憲郎さんや著名な同時通訳者も薦めるプロお墨付きの英語勉強法です。もちろん、私もお薦めします。

 

4.英語が苦手です。苦手意識をなくすための解決策はありますか。

 

a)「英語が苦手」の理由のひとつとして、(特に英文法で)自分の中での理解が追い付かないまま学校の勉強が進んでしまい、勉強について行けなくなって苦手になる、というパターンが多く見られます。そういう場合はまず、分からなくなったところまで戻り、ひとつひとつ文法を勉強することが必要です。どこから分からないのか分からないのであれば、分かるところまで戻る、それも分からなければ中1の教科書の最初からおさらいしましょう。やり直すのは早ければ早いほど良いです。復習をすると同時に、英語に興味を持てる何かを探すことも大切です。映画、音楽、ゲーム、何でも構いません。苦手意識なく英語に触れられる趣味を探してみましょう。ちなみにゲームは、日本のRPGを英訳したソフトも出ています。ゲームが楽しめて英語の勉強にもなりおすすめです。私はポケモンとドラクエ4&5の英語版が好きです。

 

5.父には学校の英語よりも話せる英語を優先しろと言われているのですが、学校での成績も取らなくてはいけません。どうしたらいいですか?

 

a)ここまでの回答にも書いてきた通り、一番大切なのは学校の勉強、特に文法です。学校の英語で良い成績が取れるくらい英語が得意であれば、話すことは難しくありません。学校での成績も上がり、話せるようにもなる、一石二鳥です。逆に文法があやふやで単語を並べるだけの会話もどきはいくらやっても上達しませんし、話せるようにはなりません。私はこれまで仕事で英語を話す日本人にたくさん会ってきましたが、海外経験が無くても素晴らしい英語を話す方は多くいます。そしてそういう方々のほぼ全員が、「中学から高校までの英語の勉強を頑張った」と話されます。頑張れば結果はついてきます。

 

6.発音がうまくできないのですが、どうやったらうまく発音することができますか。

 

a)今回のセミナーで実施するフォニックスを活用してください。ひとつひとつの音、発音に対し、常に口の形や舌と歯の使い方を意識するように心がけましょう。また③の回答に書いたように、毎日お手本を聴きながら音読をすると良いです。

 

7.日本人の英語の発音は世界で通用しますか。

 

a)残念ながら日本人のいわゆるカタカナ発音は世界では通じません。英語には日本語に無い音があります。それをしっかりと習得し、意識して発音をすることで通じる発音を身に付けましょう。

 

8.洋楽を聴くこともリスニング力UPにつながるでしょうか。

 

a)もちろんです。お気に入りの曲があるのなら、何度も繰り返し聴くのが良いでしょう。繰り返し聴いているうちに、知っている単語が耳に入ってくるようになります。何度も聴いて、聞こえる単語を増やしましょう。

 

9.ネイティブの早い英語を聞き取るにはどのような勉強をすれば良いですか。

 

a)基礎文法をマスターし、英語のボキャブラリーを増やし、とにかく英語を聞いて話すことです。文法やボキャブラリーを無視して聞くことばかりやってもあまり上達しません。知っている内容、知っている単語なら優先的に聞き取れるようになります。また自分が発音できる音は聞き取りもできるようになりますから、発音を磨くことも大切です。まずは③の回答に書いた通り、教科書のお手本を聞きながら読み上げをやってみましょう。慣れてきたらより速い音源で原稿があるものをネット等で探すのも良いです。また字幕で洋画を見るのもお薦めです。

 

10.学校で習う日本人特有の畏まった文法でなく、ネイティブが話す会話特有の表現が知りたい。

 

a)ここまで何度も書いている通り、「日本人特有の畏まった文法」は何よりも大切な基礎です。それをおろそかにしてはいけません。最低でも中学3年間分の英文法は完璧にマスターしましょう。またネイティブの使う会話表現も、その根底には文法のルールが存在していることを理解してください。その上でネイティブが使う会話表現を習得するのであれば、上にも書いたように字幕で洋画を見るのも良いですし、ネイティブの友人を作ったり、英会話のレッスンを受けてみることも良いと思います。残念ながら合宿中のセミナーは大人数での団体レッスンのため、2時間でできることには限りがあります。

 

11.話せるようにしてほしい。

 

a)ごめんなさい。1時間×2回では無理です。ここまでに書いたことを参考に、日々の学習に励んでください。

 

-----------------抜粋終わり---------------------

 

 いかがでしたでしょうか。

 

 今回は対象が中高生だったこともあり学校の勉強に重きを置いた回答となっていますが、ここに書いたことは大人が英語を学ぶ上でもとても大切なことばかりです。

 

 これらの質問を読んでいてとても残念だったのは、受講生たちが「簡単に英語ができるようになりたい」と思っていたことよりも、「学校の英語より話せる英語を優先しろ」という親御さんがいらっしゃったことです。何て無責任なことを言うのかと、わざわざ子供に英語で遠回りをさせるようなことは言ってくれるなと、どうしようもなく切ない気持ちにさせられました。

 

 子供の英語教育に学校以外の場を利用することを全否定する気はありません。しかし、学校の授業で得られる基礎力を蔑ろにすることはとても非効率なことです。集中して徹底的に基礎に時間と労力を割くことのできる義務教育の英語教育を、もっと大切にしてほしい、そして親世代にもその重要性を認識してほしいと切に願います。

 

 同時通訳者山下恵理香による英語指導の詳細はこちらのページをご覧ください。

 

 このコラムは当サイト併設の「同時通訳者Erikaのブログ」に掲載している英語学習関連記事を再編集したものです。同ブログでは英語学習以外のトピックの記事も公開しています。併せてご利用くださいませ。

 

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