【通訳のお仕事】今までで一番大変だった通訳の仕事

 こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。 

 

 たまに仕事で聞かれるのが、「今までで一番大変だった仕事って何ですか?」という質問です。そんな時私には迷わずに答える、ある仕事があります。今関わっているテコンドーの仕事ともそう縁遠くはないスポーツ分野での仕事でした。今回は、その「今までで一番大変だった仕事」についてお話ししたいと思います。

 

 私がまだ静岡の実家から新幹線でサイマルアカデミーに通っていた頃のこと。ある日友人のフィリピン人女性から、知り合いが通訳を探していると電話がありました。依頼主から直接話を聞くと、サッカーのレフリーインストラクター講習での通訳とのこと。場所が実家のすぐ側のナショナルトレーニングセンターだったこともあり、すぐにOKの返事を出しました。

 

 レフリーインストラクターとは、レフリーを目指す人を指導する立場の人です。その講習は、そのレフリーインストラクターを目指す人のための講習会でした。

 

 「動ける服装で来てください」

 

 とだけ言われ、事前資料も何もなしで当日現場へ行きました。すると待っていたのは、実際にピッチに出て選手とレフリーを入れてレフリー研修のデモをやると言う、実技演習でした。

 

 普段通訳と言えばスーツにパンプスでメモとペンを持ってやるはずが、その日はジャージにスニーカーでレフリーインストラクター候補に合わせて走るという異常事態。日頃から運動不足な私は転ばないようについて行くだけで精一杯でした。

 

 更に広い芝生のピッチ上は室内とは異なり声が響きません。出しても出してもむなしく散って行く声に気が遠くなりながらも、離れた場所にいる相手に指示を届けるために大声を張り上げ続けました。お察しの通り1日ですっかり喉がつぶれ、その後2日ほどはまともに声が出ませんでした(涙)

 

 通訳の世界では、絶対的にその道のエキスパートを必要とする分野があります。人の命や人生に関わる医療と法律が代表格ですが、スポーツ通訳もまた他の分野とは一線を画した分野になっています。この仕事をしてみて、その理由が分かりました。

 

 サッカーのようなスポーツの現場に関わる通訳者さんは、アスリートです。オフィスワークばかりの体力不足で声量不足の通訳者には務まりません。そもそも必要とされるスキルが違いすぎるのです。二度と軽い気持ちでスポーツ通訳(現場)を引き受けることはしまいと、心に誓いました。

 

 このサッカーの仕事は、通訳者のキャリアや経験としてはあまり役に立たなかったものの、クライアントや通訳仲間やエージェントへの話のネタとしては大いに活躍してくれています。まあこんな仕事もひとつくらい経験しておいて損はなかったかなと。そして若いうちで良かったと、今振り返ってみて心底思います(笑)

 

 現在は通訳者としてテコンドーに携わっている私ですが、幸いなことに関わっているのは事務方のみで実戦に関わる部分ではありません。ジャージではなくスーツで、スニーカーではなくパンプスで仕事をしています。喉がつぶれるほど大声を出すこともありませんし、必要であればマイクを使うこともできます(笑)スポーツ通訳と言えば現場で選手とという漠然としたイメージしかなく、このサッカーの仕事である種のトラウマがあったので、こういう関わり方もできるのだということを知り、今はいつも楽しく勉強させてもらっています。

 

 事務方の仕事が主なのでほとんど選手と会うことがないのが少し寂しいのですが、この春休みに中高生を対象に行われる国内合宿で英会話セミナーを開くことになりました。私が講師を務め、参加選手数はなんと80人以上。しかも研修室が使えないため、場所は練習に使用する大きな体育館です(笑)こんな大所帯を一人で指導するのは初めてのことなので少しドキドキしていますが、とりあえずマイクは使わせてもらえるそうなので、そこは一安心です。

 

 今後は通訳者としてだけでなく、英語コーチとしてもスポーツの分野に関わって行けるよう、様々な可能性を模索して行きたいと思います。

 

 

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