【私が通訳になるまで28】通訳学校と入門科3(指されたくない時ほど指される不思議)

 こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。 

 

 今回は久しぶりに、「私が通訳者になるまでシリーズ」の更新です。通訳学校経験者なら恐らくほとんどの人が経験したことのある、とある怪奇現象について語ります。これは入門科(現通訳II)に限った話ではないのですが、最初にこの怪奇現象に出くわしたのが入門科だったので、入門科の記事に入れておきます。

 

 今も謎が解けない怪奇現象とも言える通訳学校あるある。それは、「自信がある箇所は指されることがほぼ無いのに、指されたくない時は大抵ドンピシャで指名される」という現象です。先生方には超能力が備わってるのではないかと疑うほど、当たりたくない時はほぼ100%当てられました。

 

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 なぜこれを初めて経験したのが入門科だったかと言うと、準備科時代は自信がある箇所なんてほとんど無かったため、どこを指されてもできなかったからです(笑)少しずつ基礎演習に慣れ、通訳の作業自体もたまに成功体験(主にはペアワークか各自吹き込みの時間)ができるようになったのが入門科でした。そしてその頃から、先述の怪奇現象に悩まされるようになりました。

 

 この怪奇現象に関しては数えきれないほどの思い出が...と言うかこの怪奇現象がサイマルアカデミーの思い出の大半を占めていますが、中でも入門科時代に強烈に印象に残っていることがあります。

 

 その日は「吹き込みをした自分のパフォーマンスを聞く癖をつけましょう」というのが授業のテーマでした。授業の進め方も普段の「初見で一人ずつ当てて訳す→全員で一斉吹き込み」ではなく、初見で先に全員で一斉吹き込みをし、先生に指定された箇所の録音を教室で流すという変則的な回でした。この時もやはり、指定されたのは一番できなかった箇所。できなかったと言うよりも、ほとんど吹き込みができなかった箇所でした。悩んだ末に先生に申し出ました。

 

 「このポーションは全然吹き込みができなかったので、別の箇所にしてもらえませんか?」

 

 先生は少し渋い顔をしつつも、「ではここを」と別の箇所を指定してくださいました。

 

 が、しかし...

 

 次に指定された箇所は最初の箇所の次にできなかった箇所でした。セカンドベストならぬセカンドワースト。やっぱり超能力!?しかしながらここもできなかったとは言い出せず、観念して流しました。

 

 そして先生の反応は、「...ん?これだけ?」

 

 もう先生の顔をまともに見ることすらできませんでした。

 

 この2つ以外の箇所ならしっかりできてたのに...何と言う運の悪さ...(泣)。

 

 こんなことが入門科から同時通訳科卒業までの3年半で数えきれないほどありました。この頃は「運が悪い」と、この怪奇現象に出くわす度に思いましたが、今思うと甘かったなあと(笑)。

 

 なぜならこれは、通訳者が実際の仕事で直面する問題に通じているからです。つまり他の箇所がどんなに上手く訳せていても、たった一箇所致命的なミスをしてしまうと、「下手な通訳」のレッテルを貼られてしまう危険性があると言うことです。そのリスクを回避するためにも、全ての箇所で一定線以上の質を保つ必要があります。

 

 どこか一箇所飛びぬけて上手くできたとしても、それは全体の仕事の中ではほとんど意味を持ちません。「ここはダメだったけどこっちはできたから良いでしょ」は、プロの仕事では通用しません。人間ですからミスが出るのは仕方ありませんし、他人の言葉を仲介する性質上全てを完璧にこなすのは難しいことですが、「ミスをするなら取り繕える範囲内で」というのが大事です。恩師の言葉を借りるなら、「墜落しないことが大事」なのです。

 

 「指されたくない時ほど指される」怪奇現象の正体は、箇所によって訳に極端な良し悪しが出てしまう、通訳者としての自分の未熟さだったのだと今では思います。

 

 こうして書いてみれば確かにその正体は未熟さ以外に思いつかないのですが...それでも尚、なぜ先生方はあんなに百発百中なのか、そこは未だに謎のままです(笑)。

 

 

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