AI自動翻訳時代の通訳需要と必要スキル(上)

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 こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。 

 

 前回(AI自動翻訳と通訳のこれから)、前々回(AI自動翻訳で高い精度の英訳をするコツとお手本)と、自動翻訳・機械翻訳についてお話ししました。この2本の記事の中では自動翻訳を使いこなすため、また自動翻訳とうまく付き合って行くためには、相応の英語力が必要だという話をしました。しかしながらこのAI自動翻訳が躍進する時代の中での通訳者の位置づけについてはあまり書いていなかったのと、「それなら通訳の勉強はいらないのでは?」と誤解を与えかねない内容だったので、今回と次回の2回にわたり、AI自動翻訳時代の通訳と必要とされるスキルについて私の考えをお話しします。

 

 最初に断っておきますが、私がここで書く予想は総論です。AI自動翻訳が人間にとって代わると私が予想する業務のすべてがなくなるとは私も思っていませんし、個々の案件についてはそれぞれ様々な形で残っていくと思います。そのため「全体的にはこうなるであろう」という話として読んでいただければと思います。

  

 

✔ 通訳需要は「下」と「上」からなくなる


 まずはAI自動翻訳の台頭により今後の通訳需要がどのように変化するか、という点です。

 

 「AIの進化によりスキルが低い人の仕事から無くなっていく」というのはどの業種でも言われていることで、通訳も例外ではありません。これは非常にシンプルな話です。

 

 しかしそれと同時に通訳・翻訳業界では、「上」のレベルの仕事も減っていくと私は予想しています。「AI時代に生き残れるのは専門性の高い通訳者だ」という意見もありますが、私はそうは見ていません。

  

 

✔ AIが得意とする通訳とは


 私はAIが得意とする通訳、すなわちAIが高精度でできるようになる通訳の条件は次の2点だと分析します。

 

1.発言内容が明確で正確に読み取ることができる(複数の意味を含むまたは複数の意味に解釈できる内容でない)

 

2.訳の多少の不自然さをカバーできるだけの知識(専門知識、英語・日本語の知識など)が聞き手にある

 

 これを元に、通訳作業をAIと相性の良い内容とそうでない内容に分けて考えたいと思います。

 

 

 

✔ 「専門性」とAIの相性 ◎


 通訳業界の「上のレベルの仕事」とは、「同時通訳」「専門性が高い」「技術と経験が必要」と言い換えることができます。

 

 「同時通訳」は発言内容を読み間違えることがなければ自動翻訳のスピードはずば抜けていますし、経験は大量のデータの蓄積とそれを実際に使い人間がエラーを修正しAIにディープラーニングさせることで得ることが可能です。

 

 そしてここで重要なのが「専門性」です。「専門性」とはつまり、「その分野に関する知識、語彙、経験」です。知識と語彙に限って言えば、これはAIの得意分野です。

 

 知識であれ語彙であれ、AIはそれをデータとしてインプットしてしまえば忘れませんし、必要であれば人間のように思い出す努力もせずに瞬時にそのデータを使えます。対訳がはっきりとしている言葉の置き換えは機械の最も得意とするところです。また専門性が高い分野であればあるほど、言葉の裏の意味や行間を読む必要のある表現は出て来ません。AIが誤解なく発言を読み取れると言うことです。つまりその分野に関する膨大なデータから適切な文脈で言語変換することが高確率で可能なのです。

 

 更には専門性が高い分野の通訳の場合、通訳を使う側にも聞く側にもその分野の専門知識が十分にあることがほとんどです。つまり聞き手は多少不自然な訳であったとしても、聞きながら「こういう意味だな」と脳内で自動修正しながら聞くことが可能なのです。

 

 このように「専門性」とAIの相性は非常に良く、先ほど挙げた「AIが高精度の通訳をするための条件」を2つとも満たしています。このため私は、専門性の高い分野から通訳の仕事がAIに置き換わっていくと考えています。 

 

 

✔ 「空気」とAIの相性 △


 とは言え私たちは人間ですから、常に機械が読み取りやすい発言ができるわけではありません。特に交渉事になれば、言葉の裏に本音を匂わせるということは当然あります。

 

 確かにAIは空気や行間を読むことはできません。しかしながら例えば自動翻訳が言葉をそのまま変換して訳したとして、そこから相手の意図を読み取るのは人間の仕事です。そこに自動翻訳が入っても入らなくても、相手の発言そのものは変わりません。例えば英語のまま相手の発言が聞き取れた場合でも、場の雰囲気や話の流れ、また相手の語気の強弱などから総合的に判断して、それが言葉通りの内容なのかそうでないかを考えるのは聞き手がやるべきことです。

 

 このため「空気を読む」は「専門性」ほどAI自動翻訳と相性は良くないものの、これは使う側の読解力の問題なので相性が悪いとまでは言い切れません。そのため「△」にしました。ただし訳を聞く側が相手の意図を読み取る自信がないのなら、その際には人間の通訳者を入れるのが正解でしょう。

 

 

✔ 「感情」とAIの相性 ×


 「感情」は現時点でAIが最も苦手とするものでしょう。AIの改良とディープラーニングが進み自動翻訳の精度は確かに向上しましたが、そこには機械の限界もあります。

 

 感情の表現方法は人それぞれですから、個々人の喜怒哀楽を的確に表現できる言葉を自動翻訳が選ぶのはほぼ不可能だと思います。同じ言葉を使ってもそれにどんな感情を込めるかで意味は変わってしまいます。機械的な言葉の置き換えだけでは伝えることのできないのが人の気持ちですから、ここにはまだ自動翻訳が入り込む隙は無さそうです。

 

 

✔ これからの通訳に必要なスキルとは


 以上の通りAI自動翻訳の劇的な精度向上は、今後通訳業界に地殻変動を引き起こすと言っても過言ではないでしょう。そんな中、今後通訳者を続けて行く上でまた通訳者を目指す上で必要なスキルとはどんなものなのか、次のようにまとめました。

 

  • AI自動翻訳の癖を知る
  • 感情やニュアンスを正確伝えるスキル
  • 従来の通訳技術

 

 長くなりましたので今回はここまでにします。次回はこれらそれぞれのスキルとそれが必要な理由、そして現在私の通訳講座を受講されている生徒さんたちの傾向から見える今後の通訳需要についてお話ししたいと思います。

 

 

つづき:AI自動翻訳時代の通訳需要と必要スキル(下)

 

 

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【About Erika】

職業:英語同時通訳者(個人/フリーランス)

現住所:東京

留学歴:3年(アメリカ)

特技:柔道(初段)、ピアノ(弾き語り)

趣味:料理、お菓子作り、食器屋巡り

楽しみ:正月の箱根駅伝、2か月に1度の大相撲観戦(テレビ)、年に数回の柔道国際・国内大会テレビ観戦、年に数回のブロードウェイミュージカル日本公演、不定期の札幌旅行