トヨタの人材教育に学ぶスキル習得に必要な意識

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  こんにちは、英語同時通訳者オンライン英語・通訳講師の山下えりかです。

 

 先日PRESIDENT Onlineで興味深い記事を読みました。『トヨタが重宝する「ひとりで解決できる社員」とはどんなスキルを持つのか』という記事で、ここではトヨタの「危機管理人を育てる方法」について語られています。その内容が通訳訓練にも通じていると感じたので、今回は記事から気になった箇所を抜粋し、トヨタの人材教育方法を通して通訳訓練に必要な姿勢や意識を考察します。

 

 

 

✔ 執念がなければスキルは身につかない


ラインを見つめることで言えば、立たせた後、上司が見本を示してくれる。そうすれば、勘所がわかる。ただし、すぐに教えたら、身につかない。けれども、丸一日、円のなかに立っていた後であれば、どうにかして見つけようという執念が湧いてくる。執念がなければスキルは身につかない。(記事より抜粋)

 

 

 自分の実力不足への怒りと焦りに突き動かされて自分で考え自分で努力をしなければ身につかないスキルは確かにあります。通訳技術もそのひとつです。

 

 通訳学校では先生方は手取り足取り技術や訳を教えてはくれません。それは不親切なのではなく、基本的なやり方を教えたらあとは生徒の努力次第だからです。

 

 特に通訳訓練を始めたばかりの頃は「自分の訳が正しいかどうか全部チェックしてほしい」とか「教材全部に対して先生のお手本訳を聞きたい」などと思ってしまいがちですが、それがすべて与えられてしまっては「自己評価や自己修正のスキル」や「自分の手持ちの語彙や表現だけを駆使して訳すスキル」が育ちません。「これで合ってるかな...」という不安を抱えながら自分が思う正解を声に出すことにも慣れて行かなければいけません。

 

 講師の指導は必要最低限にとどめ自ら学ぶ力を育てるという通訳学校のスパルタ式の訓練方法は「強いフリーランスの通訳者」を育てるために必要だと今でも思っています。そのため私は自身のオンライン通訳講座の受講生でフリーランスを目指す方には、個人レッスンのメリットを活かして基礎力を身につけた後は、通訳学校へ行くことを勧めています。

 

参考:オンライン個人レッスンと通訳学校のメリット&デメリット

 

 その一方で私の講座の受講生には、フリーランスの通訳者を目指しているのではなく、「会社から通訳をしてほしいと頼まれて...」という理由で通訳技術を求めている方も少なくありません。またフリーランスの通訳者を目指すかどうかはまだ分からないけれど通訳訓練に興味があるという方もいます。このような方々の場合は最初からフリーランス通訳者を目指す場合とモチベーションの面で大きく温度差があることが多く、「通訳学校のスパルタの授業には気持ちも技術もついて行けない」という声を聞きます。その場合は通訳学校以外の選択肢が必要なのは明らかで、私もそれぞれのニーズに合わせたレッスンを提供できるよう日々努力しています。

 

 ただしどちらの場合でも言えるのが、「絶対に身につける」という強い気持ちがなければ通訳技術は身につかないということ。教える側は伝えるべきことを伝えたらあとは見守ることしかできません。すべては学ぶ側の努力次第です。

 

参考:上達の秘訣は「自分で考えること」 - Think before you ask

 

 

✔ 現場で通用する力を育てる


なぜ、そこまで一見、理不尽なスパルタ式の教育をしてきたか。

 

それは、楽な教育という温情をかけると、実際の危機管理の現場では通用しないからだ。危機の現場とは命にかかわる現場だ。ちょっとした油断が本人や周囲の命にかかわる。

 

厳しい教育は油断や気のゆるみをなくすためのものだ。

 

危機の現場ではひとりで考えなくてはならない。上司はいない。ひとりで苦労した体験を頼りにプランを考え、実行し、かつ、被災した人間の力になる。

 

 

 医療や司法と言った特殊な場面を除き、主に会議やビジネスに携わる通訳者の仕事が人の命にかかわることはあまりありませんが、それでもやはり通訳者のパフォーマンスが自身や周囲に与える影響は大きいものです。

 

 複数の通訳者が入る現場であっても、やはり通訳者は常に独りです。常に自らの判断で解釈をし訳出をしなければなりません。また通訳の作業はスピードとの勝負です。瞬時に自分で考え決断できる力がなければできない仕事です。通訳訓練がスパルタであるべき理由はここにも繋がっています。

 

 また通訳訓練、特に通訳学校の授業では、本番さながらの緊張感の中で通訳をし、先生方からは「商品として適格かどうか」という厳しい目線で評価されます。練習段階からこの緊張感にさらされることで、ほんの少しの気のゆるみもない集中力を身につけることも、「現場で通用する強い通訳者」になるために必要不可欠な要素なのです。

 

参考:通訳になるには?通訳に向いている人・向かない人

 

 

✔ おわりに


 このトヨタの人材教育の記事を読んで感じたのは、どの分野でも「本物のスキル」を身につけるには多大なる努力が必要で、そこには近道と呼べるものは無いということです。

 

 目指すのがフリーランス通訳者であれ社内通訳者であれ、訓練を受けるのが通訳学校であれ個人レッスンであれ、通訳者に必要な技術、姿勢、胆力、集中力を身につけるには時間がかかりますし、想像以上の努力が必要です。強い気持ちと目的意識を持ち、地道な努力を続けることこそ、目標達成への唯一の「近道」なのです。

 

 

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【About Erika】

職業:英語同時通訳者(個人/フリーランス)

現住所:東京

留学歴:3年(アメリカ)

特技:柔道(初段)、ピアノ(弾き語り)

趣味:料理、お菓子作り、食器屋巡り

楽しみ:正月の箱根駅伝、2か月に1度の大相撲観戦(テレビ)、年に数回の柔道国際・国内大会テレビ観戦、年に数回のブロードウェイミュージカル日本公演、不定期の札幌旅行