オンライン通訳講座の演習内容紹介


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✔ レッスンの流れ


 当講座の内容は、私がサイマルアカデミーで受けた通訳訓練が基となっています。レッスンの内容は受講生のレベルによって異なりますが、最も多いのが次の内容です。

 

1.前回の復習(メモをとりながら20~30秒区切りで通訳する。)

2.前回教材の要約の確認(既習教材を半分程度に要約したものを読み上げる。)

3.新規教材のリテンション&リプロダクション(聞いた内容を同じ言語で正確に繰り返す。)

4.メモ無し通訳(リプロダクションした内容を通訳する。)

 

 上記は主に通訳初心者から中級者までを対象に実施している内容です。安定的に正確な記憶ができるようになってからは新規教材を20~30秒区切りでメモを取りながら訳す演習に移行します。

 

 それではひとつひとつ解説します。

 

 

✔ リテンション&リプロダクションとメモ無し通訳


 当レッスンでは正確な通訳のために正確な記憶をする力(リテンション)に重点を置いています。またリテンションを鍛えることでメモをたくさん取らなくても通訳できる力を育てます。 メモをたくさん取ろうとすると聞き取りが疎かになりがちなため、聞き取りに集中する習慣をつけ、頭の中だけで記憶し処理できる情報量を可能な限り増やすのが目的です。

 

 これは私が通訳訓練を受けたサイマルアカデミーの指導方針にならったものです。サイマルアカデミーでは通訳訓練の初期(準備科や入門科)に多くの時間を使いリテンションを鍛えます。先述のようにメモの取りすぎによる聴き洩らしを防ぐため、準備科の前半ではメモは一切使用せずに演習を実施していました。この時に鍛えたリテンションの技術こそ今の私の通訳の土台であると常に感じているため、私もリテンションの訓練を何よりも大切にしています。

 

 リテンション&リプロダクションの演習では聞いた話を同じ言語で正確に繰り返し、理解と記憶の正確さを確認します。その後リプロダクションした内容を訳します。リテンション&リプロダクションとメモ無し通訳はいずれも1文ごとに区切って実施します。

 

 このリテンション&リプロダクションとメモ無し通訳がレッスン当日のメイン演習です。

 

 

【参考】

 

 

 

✔ 前回の復習


 レッスン終了後、その日に使用した教材のスクリプトと復習用動画のリンクを受講生にメールで送ります。復習用動画では発言を15~30秒の長さで区切り、各発言に対して1.2倍のポーズ(通訳用の無音時間)を入れています。これをメモを取りながら訳すことで、ある程度の長さの逐次通訳の練習をします。既習教材でメモ取りの練習をすることで自分に合ったメモの取り方を研究していただくことも目的のひとつです。また復習用動画を使って練習することで、通訳に必要な時間の感覚を養うこともできます。復習した内容は次のレッスンの冒頭で確認をします。

 

 レッスン冒頭の復習は、ウォーミングアップと、通訳が復習用動画の時間内に収まっているか、またスムーズで相手が聞き取りやすい通訳に仕上がっているかの確認が目的です。またレッスンの最初に慣れた教材で良いパフォーマンスをすることで、良いイメージを持って初見教材に臨むための大切なアクティビティでもあります。

 

 

✔ 復習の仕方について


 私がおすすめしている復習の方法はこちらです。

 

1.スクリプトに訳をつける(翻訳をする)

2.スクリプトと自分の訳を一文ずつ交互に読み上げる(音読)

3.復習用動画を使ってメモあり逐次通訳練習

 

 なぜこの順番なのか説明します。

 

 「スクリプトに訳をつけましょう」と言うと、「通訳は口頭でできなければいけないのであまり意味がないのでは?」という反応が返ってきます。しかしながらゆっくりやってできないことは速くもできません。そのためまずは訳すという作業に慣れる必要があります。

 

 加えて口頭での通訳の際には時間との勝負ということもあり、「もっと良い訳語がありそうだけれど...」と思いながらも速く訳さなければという気持ちからセカンドベストやサードベストに甘んじてしまいがちです。そのため時間を使える復習時にはぜひベストの訳を追求して欲しいと思います。その作業の繰り返しにより、時間との勝負の中でもベストの訳が一番に頭に浮かぶようになって行きます。

 

 訳を書き出したら今度は声に出して読み上げます。通訳は声に出すまでが仕事ですから、書いただけでは不十分です。書き出した訳を実際の通訳で使えるようにするためには、それをよどみなく自分の口から出せることを確認することが大切です。

 

 内容の把握と訳し方に自信が持てたところで、最後の仕上げとして復習用動画を使います。訳語や表現を確認しながら、訳に使う時間やデリバリー(表情、声のトーン、話すスピードなど)も意識しながら通訳を完成させて行きます。

 

 ここまでやると、「内容を覚えてしまって通訳の意味がない気がする」と言う人もいます。しかし覚えることに意味がないなどということはありません。内容と訳を繰り返し声に出し覚えるということは、使える引き出しが増えるということです。通訳に慣れておらず「どう訳したら良いかわからない」という人はまずこの引き出しの数が圧倒的に足りていません。咄嗟に使える引き出しを増やすことは上達への近道です。

 

 

✔ 要約課題


 通訳の復習に加え、復習教材の要約の作成を課題として出しています。要約の目安は教材の読み上げにかかる時間の半分以内に収めることです。通訳者は文字ではなく口頭で要約をすることが求められるため、文字数ではなく時間を目安に実施しています。

 

 要約もリテンション&リプロダクションと同様に大切な通訳の基礎技術です。通訳者に求められる要約の技術とは「重要な情報を瞬時に見分ける技術」であり「必要な情報を短時間で簡潔にまとめる技術」です。通訳者は情報に優先順位を付けながら話を聞き、重要な情報を中心に頭の中で話をまとめて訳に反映させることが求められます。

 

 もちろん最終的な目標は聞いた話を瞬時に要約することですが、初めからそれは難しいので、まずは要約という作業そのものに慣れてもらうために既習教材を使った要約を課題にしています。作成した要約は通訳の復習後に読み上げてもらい、内容の添削をします。

 

【参考】